194-エミド
バスティエ星系のゲートを潜った私たちは、見たこともない種類の艦船に取り囲まれた。
見たことはない...だけど、「知っている」。
「...そいつらはエミドの艦船だ! 武装に当たるな、シールドごとやられる!」
『了解!』
知識にあるエミドの姿とほぼ同じなので間違いない。
観察すればわかるが、武装らしい武装はどこにも付いていない。
だが。船体各所に取り付けられた...といっても普通は一隻につき一つだが、黒い球体のように見えるものが武装である。
物質の組成を脆弱化した後にレーザーで焼き切る、エミドの武器だ。
「エミドのシールドはレーザーに特化していて物理攻撃に弱い! アリア、ミサイル発射準備!」
「は...はいっ!」
アドアステラの船の前面から発射されたミサイルが、エミドのシールドに衝突して炸裂する。
シールドに無数の小さな穴が空き、後続のミサイルが直撃して内部にまで貫通する。
エミド艦船は知識によれば、シールド頼りで外装は脆いらしい。
「ファイス、フォートモジュール起動」
「はい! それから、攻撃・推進カーネル起動します!」
『舵をお返しします、マスター』
「サブワープドライブ起動」
「ミサイル、次弾装填!」
この星系群に来てからあんまりやっていなかった戦闘。
それを今、私たちはやっている。
アリアのミサイルがエミド艦隊のシールドを剥がし、そこに私達がレーザーを叩き込んで沈めていく。
数分もしないうちに、小競り合いは終わっていた。
「このまま救難信号の場所まで行く」
「「「「「「『了解』」」」」」
アドアステラはそのまま滑るようにワープへと入り、その先へと向かう。
Ve‘zはよくわからないが、エミドはVe’zよりよく分からない対象でもある。
報復はしてくるものの、エミドの技術にさえ手をつけなければ、死ぬまで追われ続けるようなこともないそうだ。
...「知識」によれば、だが。
『ワープ終了まで残り10秒!』
アドアステラが減速を始める。
そして、しっかり10秒後。
アドアステラは宙域に放り出された。
「わあ...嘘だよね」
「残念ながら、真実です。御主人」
襲われているのは、星系軍の標準戦艦艦隊であり、それを襲っているのは...主力艦級の大きさを持ったエミド艦であった。
「ど...どうする...」
以前は、私たちの周囲にはたくさんの味方がいた。
だから、恐れずに主力艦とも戦えた。
だけど今は、全滅しかかっている味方をアテにすることはできないし、相手は完全に未知の敵である。
「いや...」
お兄ちゃんならこう言っただろう。
『でかいから、知らないからといってそいつが強いか弱いかなんかなんてわからない。もし、退けない理由があるのなら、お前はお前のやりたいようにやれ』
って。
もちろん想像だし、お兄ちゃんはもっと素晴らしいことを口にする筈だ。
でも、私はいつも心にお兄ちゃんを映している。
それが何よりの勇気を齎してくれるから。
「キャッスルモジュール起動! ラビはレイヴンで出撃して、雑魚を潰せ!」
キャッスルモジュールを使わなければ動けるが、動いたところで関係ない。
助けるべき対象はエンジンをやられて動けない様子で、エミド艦は星系軍さえ破壊すればそれでいいらしい。
ならば、
「雷撃戦準備!」
まずはシールドをなんとかする。
それから...なんとかする!
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