193-新しき盾
アステロイドベルトにワープアウトした私たちは、直ぐにアドアステラを発見した。
よくわからない敵に襲われて、逃げている。
あの三次元的な操舵は、シトリンかな?
「こちらストーク! アドアステラ、下部ハッチを解放しろ!」
ラビが叫んでいる。
アドアステラはバレルロールを繰り返しながら攻撃を回避しているが、ラビはそれに合わせて機体を回転させている。
巧い、ものすごく。
『申請を受諾。アドアステラ下部ハッチを解放します』
「了解!」
アドアステラの下部にある、戦闘機用のハッチが開いていく。
ストークは、アドアステラと並列になるように調整しつつ、回転角度をアドアステラと同期させていく。
「カル、舌を嚙まないでね!」
「ああ!」
ストークは一気にアドアステラの内部へと突入する。
格納庫のあちこちにぶつけながら、上下逆の格好で床を滑り、ラビがすぐに立て直したことで翼が天井を削ったものの体勢を立て直す事が出来た。
『収容完了。ハッチを閉じます』
ハッチが閉じると同時に、私とラビはストークから飛び出した。
「あれは、アドアステラじゃ倒せない....」
「何か知ってるの、カル?」
「知っているというか、理解させられたというか.......」
あの光を浴びたことで、私は多分....Ve’zに関する情報の一部を知識として植え付けられた。
その上で、Ve’z人のデータの解読方法も理解した。
「それで、あれは何なの?」
「.....エクスタミネーター・ノクティラノス。「エクスティラノス」って呼ばれている上位個体の手足となって動く、いわば兵士。....のはず」
「ふうん....」
「あのシールドは完全防御型で、エネルギーが尽きない限り貫通出来ない。だからアドアステラじゃ無理なんだ」
「....なるほどね」
艦橋にたどり着いた瞬間に、私は命じる。
「シトリン、ラジンハイエゲートに回頭! このまま離脱する!」
「逃げるんですか!?」
「そうだ! あいつはあくまで、この星系を警戒しているだけだ。「外」に出てしまえば追ってこない!」
『了解』
仲間たちは私を疑わない。
なら、今は楽でいい。
ノクティラノスたちは...たちって言っていいのかな?
ノクティラノスは常に、スカウト四体と攻撃型一体で分隊を作って行動する。
だけど、今回襲ってきたのは一体だった。
おまけに、エクスティラノスには標準搭載されているらしいワープ無効化装備が使用されていない。
つまり、これから導き出される答えは...
「(試されていた)」
Ve‘zにとって脅威となるか、試されていたのだ。
だからもし、私がエクスターミネーター・ノクティラノスを破壊していたら。
私たちは完全にVe’zからのお尋ね者になってしまうのだ。
「...ところで、主人。その知識はどこで...?」
「あ、ああ...」
私は皆に、Ve‘zの情報を一部だけ得たと伝える。
不気味がられると思ったが、
「中々ない経験ですね、羨ましい限りです」
「ご無事であれば、我々は構いません」
「元気でよかった!」
「その...ごめんなさい、私ミサイル撃つの忘れてて...」
皆快く出迎えてくれた。
アリアはミサイルを撃てなかったことを反省していたが、どっちにしろ防御は破れないので問題ない。
近寄って、撫でてあげる。
「ご主人様、それ...」
「ん...?」
その時に袖がはだけて、私の腕に嵌っていたアームガードが顕になる。
もともと黒かったはずなのだが、白くなっていた。
「なんだろう、これ?」
私はそれを疑問に思ったものの、それを掻き消すようにシトリンが叫ぶ。
『ゲートに到着、このまま通過いたしますか?』
「うん、行って」
アドアステラはラジンハイエ行きのゲートを通過して、その先へと出た。
待ち伏せされていることもなく、シトリンはラタトヴィアへと船を回頭させる。
『...マスター、緊急事態です』
「どうした?」
その時、全員のディスプレイに赤いウィンドウが現れた。
私も席に戻って確認する。
『救難信号を受信。発信先はここからゲートを一回通過した先にある、バスティエ星系です』
「...行くしかないだろう、ワープせよ」
『了解』
アドアステラはラタトヴィアではなくバスティエへと向きを変え、ワープに入った。
後で分かったことだけど、私のアームガードは性能が大幅に増大していた。
まず、エネルギーパックが不要になった。
どこからかエネルギーを汲み上げて使う形状になった上、盾が出せる範囲が大きく上がった。
盾の枚数は七枚まで増やせて、中央の盾から離して展開することはできない。
...まあ、ちょっとは強くなった認識でいいのかな?
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