185-情報解析/原動力
調査結果。
あの塔は、今回の異変にはあまり関係がなかった。
ただ、多分有用な情報をいくつか得られた。
「A-Rought.....アロウト? アラフト? まあ、何かの情報だよね」
『データの統合パターンから判断する限りでは、星系の名称かと』
「それに、ミネルバ級? 船の情報だよね、これ」
『はい、ですが......記録年代が相当古いものですね』
「考古学的な価値があるかも?」
『こちらの情報などはどうですか?』
「....これ、エミドの武装のデータじゃない? 断片的だけど」
『更なる解析を行いますね』
「うん」
Ve’z人の記録媒体は特殊で、端子のようなものを利用せず、完全に精神交感でのみのアクセスに限定されている。
なので、宇宙空間に放り出してパラライシスリンクで情報を抜き取りカーゴに入れている。
ただ、特殊なのは情報の取り扱いだけではなく保存形式もそうだ。
テキストデータに変換できるものの、完全に解凍するには何かしらの解読ソフトウェアが必要だ。
そしてそれを得るためには、Ve‘zの艦船から回収するしかない。
『ここは恐らく、アーカイブのような場所なのでしょう』
「だろうね」
情報の記録庫に過ぎないために、情報の抜き取りは出来ても書き出しは媒体がなければ出来ない。
...とシトリンは予想した。
一応記録媒体も、オーパーツには間違い無いので持って帰る。
「それにしても、Ve’z人はどういう身体をしているのだろうか....」
『私たちには到底予想できませんね』
恐らく、人間に近い姿をしていると思うけれど.....
これまでのVe’z人の科学力を総合して見ると、どんな怪物でも驚かないと思う。
遭遇することがなければいいけど。
「俺はホラー映画は嫌いだからな」
『.....あなたにも恐れるものがあるのですね』
「....ん? ああ」
お兄ちゃんがいれば怖くない。
心にお兄ちゃんの存在がある限り、私は負けない。
だから、ホラー映画は怖くても、すぐに怖くなくなる。
「とりあえず、塔の情報はこれだけだ。解析を終えたらすぐにラタトヴィア星系に帰還する」
『了解です』
私はそう言うと、情報ルームを後にする。
向かう先は研究スペース。
回収したVe’z装甲材の耐久実験データを見るためだ。
そこにはすでに、ノルスがいたが。
「ノルス」
「装甲材の波形脆弱実験結果です」
レーザーには属性....というか、変化させられる波形があって、硬い相手でも弱点の波形をぶつけることで構造を脆弱化させられる可能性があるらしい。
実験結果を見る限りだと、ほぼ弱点のない構造材だ。
物理衝撃、熱、放射線、紫外線、赤外線.....挙げてもきりのない光線と、その変調波形に対する耐性が述べられているものの、どれ一つとして決定打になっていない。
つまり、弱点は無いって事だ。
「大体、どんな金属かも分からないんだよね...」
「はい、内部の予備材を引っ張り出してきただけですからね...」
回収したブツの中にあった、修理用の予備パーツを解析しているだけに過ぎない。
だから、私はVe‘z艦船の強さを予想より五段階上だと認識した。
これにシールド容量がいくらあるか、想像もしたくない。
「これ、最大出力で貫通できると思う?」
「難しいのではないでしょうか」
「だよね......」
現状の最大出力でブチ抜けないとなると、主力艦もたった一隻のVe’z艦に嬲り殺されそうだ。
「ノルス.....ありがとう」
「....此の身には過ぎたる称賛でございます」
「称賛じゃないよ、普通の感謝」
「....はい」
ノルスは頷く。
まったく、素直じゃないんだから。
「此の身はお役に立てていますか、御主人?」
「勿論」
「....ならば、それで大丈夫です」
なら話は終わりだ。
私は身を翻し、研究スペースを離れた。
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