179-ハダウガゴ奪還戦-アステロイドベース内部戦(後編)
こうして、動力室まで辿り着いた私達だったが...
「激し過ぎる...突破出来ないな、このままだと」
「困りましたね...」
動力室前には、大型のガトリングパルスレーザー砲が三台配備されていて、廊下にいる味方全員を巻き込んで攻撃してきた。
手甲のシールドで持ち堪えてはいるけれど、密度のない射撃の隙間を縫うことは不可能で、突破は困難だ。
「一瞬でも途切らせられれば...」
私はちらりとケインを見る。
ケインのスーツは本当にどこからこんなモノ買ってきたんだと思うばかりの高性能で、5秒だけなら音速で動ける。
正確には30秒ほど音速で動作できる性能を持つけれど、ケインが付いていけるのが5秒までということだ。
「シトリン、動力室内の敵性反応は?」
『巨大熱源の付近のため測定は困難ですが、推定二十七人、そのうち二名が対近接武装を持っています』
二人なら、私とファイスでも抑えられるか。
それなら...
「ラビ、聞こえてるな? 全砲門を動力室に向けて撃て。シールドを貫通して、壁を破壊するくらいでいい」
『了解!』
動力室から直接止めれば、少なくとも誘爆で逆流したエネルギーがゲートに流れ込んで、ゲートが次元震を引き起こして私たちは帝国艦隊と一家心中...なんて事にはならないはずだ。
というか、外から撃てばいいのに突入したのも、不測の事態を避けるためだからね。
人類の予測の範疇を遥かに超えた技術が、なんとか人類の手で動かされている。
それは、いつ爆発してもおかしくない爆弾だという事だ。
その爆弾が爆発して無事で済まないなら、下手に壊すこともできない。
『撃つよ!』
「出力を絞れ、動力源を貫いたら全員死ぬぞ」
『もっちろんだよ!』
直後、衝撃と共に破砕音が響く。
そして、明らかに射線がズレた。
「ケイン、ファイスと俺を連れて走れ! 動力室の中まで!」
「う、うん!」
直後、急激な加速を私たちは体感する。
ソニックウェーブで壁面を吹き飛ばしつつ、ケインは一瞬で廊下を駆け抜けた。
音速を超えた感想は、意外と大丈夫だったということだけだ。
多分、私はパワードスーツを着ているからだろう。
ファイスはもともと音速で動けそうな種族だし。
「どうするの!?」
「ケインはアレを無力化しろ、ファイスは制御盤を制圧! 俺はこいつらを相手取る!」
ケインが電撃波放射機を使ってガトリング砲とその周囲の人員を無力化する間に、私は一気に壁面まで下がる。
「遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ! 俺こそがアドアステラ艦長、カル・クロカワだ! 帯剣せし勇士よ、俺と戦え!」
そう叫んで、比較的偉そうな二人組を挑発する。
彼らが気を取られている間に、その背後にファイスが着地した。
「(どうされますか)」
「(行け)」
私は手で合図する。
それを「来い」という意味で受け取った帝国兵は、一斉に私に襲いかかって来る。
その手に持つのはサーベル、私とは一見相性が悪いように見える。
「その挑戦、我等が受けようではないか!!」
サーベルを持った兵士が襲い掛かってくる。
ちなみに、サーベルの剣先は単分子構造になっていて、私の手甲のシールドが傷つくくらいには切れ味がある。
だけど.....
「太刀筋が甘い!」
二人程度の斬撃なんて、今更私には無意味。
本来は重武装兵を相手にする剣術のようだ。
即座に背後に回り込んで手刀を落とし、崩れ落ちる瞬間の体を土台に自分の体を持ち上げる。
そして、素早く両股でもう一人の首をがっちり締めて、倒れ込む瞬間に片腕で地面を掴んで叩きつける。
「主人!」
「大丈夫だ、もう終わった」
このサーベル、欲しいかも....
いや、銃があるのに剣持っててもしょうがないか。
どこかの超能力者みたいに、レーザー弾を剣で弾いたりなんて不可能だしね。
「電源を落とします」
ファイスはいつの間にかIDを奪っていた。
そのIDで、セキュリティを解除して動力を止めたらしい。
響いていた機械の駆動音が、急速に落ち着いていく。
その時。
「オラアァアア!!! .......って、終わってたかよ」
「オイ、帝国の騎士じゃねえか!? 強すぎだろ、カルさん....」
扉が吹き飛び、武装した傭兵と兵士たちが飛び込んできた、
何が何だか分からないけれど.....
「とりあえず、勝ったのか?」
「ああ!」
傭兵の一人が、そう同意したのであった。
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