171-決着
白い艦隊がやってきた。
誰が呼んだのかわからないが、シトリンによると「王国騎士団」に所属する艦隊のようだ。
本来は王都周辺にしかいないらしく、この戦場に出てくるのは極めて異常な事態らしい。
「とにかく…これは好機だな」
敵の注意は完全に味方の主力艦、アルタートゥラスに向いている。
つまりは、もう高速で移動する必要はない、ということだ。
「ファイス、モードチェンジとキャッスルモジュールを起動せよ」
「了解!」
モードチェンジにより、アドアステラが大きく変形する。
追加砲塔が出現し、攻撃能力が大幅に増大した。
今なら、足が止まっていても問題ない。
「戦艦を纏めて潰す、近距離クリスタルに切り替え。ターゲット開始!」
『待って、カル!』
その時。
繋がったままの通信回線を通して、ラビの声が響いた。
「どうした?」
『王国騎士団なら、戦艦の相手は十分に出来る。だから、カルはクロムセテラスを撃って!』
「無理だ、アドアステラの攻撃能力では…」
『違うよ、カル。仲間を頼って。…ビージアイナのシールドは一点突破に弱いんだよ』
そうか。
もしかして、主力艦というだけで誤解していたが、シールドの硬さは艦種に比例しない?
だとしたら。
「…シトリン、ノルス! 共同で敵のシールド脆弱化部分を計算せよ!」
「了解!」
『了解!』
ノルスの知識、シトリンの演算能力。
これらを突き合わせて、シールドの弱点を狙い撃つ。
「ファイス、シトリンの代わりに中距離クリスタルに変更! アリアはバリアミサイルを準備!」
バリアミサイルとは、B55421-対熱的シールド展開コイル内臓弾頭という長い名前を持つミサイルだ。
艦隊支援用だけど、基地で買えたので買っておいたものだ。
主力艦の砲撃を防げるかは謎だけど、シールドを抜かれた今は役に立つはず。
「更に、攻撃・電子・遠隔・モジュールカーネルを起動せよ」
攻撃と遠隔カーネルで精度を高め、モジュールカーネルで威力を底上げ、電子カーネルで演算を支援する。
その間にも撃ち合いが始まり、簡易レーダー画面に映る戦艦の艦影が徐々に減少していく。
消耗し、士気の落ちた帝国軍では、練度も士気も高い王国騎士団に勝てないのだろう。
なら、
「俺たち一般の傭兵に出来ることはただ一つ。シトリン、結果は?」
『情報をHUDに共有します』
予想通り、シールドの結合面を意図的にこちらの主力艦の射線から外している。
結合点と言っても、普通の砲撃では破壊すらできないので、こうして晒されているのだ。
そこをロックオンし、砲台が動くのを待つ。
「撃て!」
直後、今のアドアステラが放てる最大の集中砲火が、クロムセテラスのシールドに突き刺さった。
その一撃は、主力艦の砲撃よりも少し弱い程度である。
しかしながら…効果は、あった。
「もう一撃、撃て!」
次の一射で、クロムセテラスのシールドがそこから円形に撓む。
だが、その時点で敵に気づかれただろう、クロムセテラスの射線がこちらへ移動し始めた。
「次の砲撃後、バリアサミサイルを放つ。アリア、装填!」
「はいっ!」
クロスカウンターには持ち込ませない。
アドアステラの砲撃を、移動し始める結節点に向けて放った。
直後、主力艦が発砲する。
シールドのないアドアステラは貫かれて終わりだ。
だが…
『シールドが展開されました。砲撃により徐々に崩壊していますが、敵の陽電子砲の勢力は急速に減衰、無効化に成功しました』
バリアミサイルが、その無慈悲な一撃を防ぎ切る。
そして、こちらの砲撃はシールドを貫通し、クロムセテラスのシールドを引き剥がした。
「これで、あとは倒すだけだ!」
こちらの主力艦、アルタートゥラスが砲撃を再開し、シールドのなくなったクロムセテラスの装甲に対して明確な損傷を与え始めた。
そして、私の予想通り敵もそれをまずいと思ったのか、クロムセテラスはゲートのある方向へとワープしていった。
直後、宙域に残っている戦艦たちもワープしていく。
「勝った…?」
そう、勝ったのだ。
私たちは、完璧な勝利とは行かずとも、主力攻城戦艦とその護衛艦隊を退けたのだ。
『お疲れ様です。味方の指揮官からのメールが届いています、至急アウトポストで報告を行うように、との事です』
「…分かった」
休む暇もないけど、しかし入港できるのは有難い。
私はアドアステラを旋回させ、アウトポストへ向かうのであった。
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