169-最悪の敵
ゲートを通過したアドアステラとルークスは、ゲート前で起こっている戦闘を目にした。
「加勢するか?」
『有難いだろうが、恐らくキリはないぞ』
「だろうな」
私は確認するように、皆を見る。
アリアだけ若干不安そうだけど、準備が出来ていない仲間はいないようだ。
「よし、事前に共有された戦域データを参照し、俺たちは主力艦の布陣する宙域へとワープする。ファイス、ノルス。頼むぞ」
「はっ」
「お任せください」
「ケイン、アリア。ミサイルとドローン操作を任せる」
「はいっ!」
「分かりました!」
「ラビ、頼む」
『うん!』
「シトリン、砲撃操作をお願いする」
『はい』
確認を終えた私たちは、戦域へとワープする。
場所的には、主力艦のいるらしい位置の背面、戦艦群がいる場所に当たる。
クロスは戦艦ではなく小型・中型艦の相手を、こちらはMSDを起動して戦艦群を撹乱し、砲撃密度を低下させて王国軍を守る。
その予定だ。
「ワープブースターは使用しない、戦闘開始まで残り三分」
「分かりました!」
アドアステラとルークスはワープトンネルを突き進み、そして戦域に出る。
だが、
「え!?」
『位置が変わっていたか.....死ぬ気で逃げるのだ!』
場所は戦艦群の中ではなかった。
超巨大な艦の眼前である。
アドアステラなど容易に踏み潰せる、そんな船が眼前で待っていた。
『王国軍データと照合。クロムセテラス級主力攻城戦艦、推定されるシールド出力は大型戦艦20万隻分に相当』
「ヤバイ、ファイス! 推進カーネルを起動! MSDをオーバークロックして逃げ切る!」
「分かりました!!」
砲身が回転しているのが見える、
こんなものに殴られたら一撃でシールドが剥がれる。
撃たれる前に逃げなくては。
『こちらは作戦通り小型・中型を抑えよう! そちらも脱出後仕掛けよ....死ぬな!』
「こっちの台詞だ!」
主力艦は文字通り、アドアステラの数百倍の大きさを誇る大戦艦だ。
いくらアドアステラでも、このシールドは破壊できない。
相手にするだけ無駄だ。
「シトリン、相手の電子戦耐性はどうだ?」
『クロムセテラスへの電子戦は弾かれていますが、他の戦艦群に対しては優位性を保っています』
電子戦に対する耐性も文字通り違う。
何しろ、小型のステーションに匹敵する巨大艦である。
「黙って見ているしかないのですか....?」
ノルスが珍しく愚痴っていた。
だけど、それはまた違う話だ。
「主力艦クラスなら、多分移動もかなり難しいはず。軍用のインターディクターで捕まえられたら面倒だし、一定以上の戦力を連れて撤退する必要がある」
『マスターのお考えは、主力艦には手を出さずに戦艦群に攻撃を加え、一定数まで減らすことで撤退戦に追い込むというもののようです』
「そうだ」
倒せないなら、取り巻きを倒す。
単艦では動けないから、クロムセテラスはある程度減った時点で撤退を指示するだろう。
正直なところ、アウトポスト一個と主力艦では交換が成立しないからだ。
「さあ、行くぞ! オルトロス展開! ラビも出撃しろ! アウトポストのシールドが抜かれる前に終わらせる!」
「りょうかい!」
『了解!』
初めての”勝てない戦い”、私たちの手に懸かっているのは勝利ではなく被害の減少だが。
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