165-急報
ガザツ星系の防衛戦を経た私たちは、しばしの間の寛ぎを得ていた。
勿論、今後の作戦にまで動員されることはない。
ただし、寛いでいるのは恐らく皆だけであり、私は――――
『その船はどこで得たのだ?』
「話す義理はないな」
『ふむ、仕方がない』
めっちゃ偉そうなゴールド傭兵のクロスと、ビデオ会話で話していた。
あの後、通信が来たと思えばクロスだったので、皆を刺激しないよう艦長室で行う事にしたのだ。
だけど、飛んでくるのは質問ばかり。
たまにはこっちから返してやろうかな。
「お前こそ、その船はどこのものなんだ?」
『答えてやろう。アリディア・シップメーカー製のプリタイプ系列を俺が改造した”ルークス”だ』
「どんな改造かもわかったものではないな」
違法改造によって強化されているのかもしれない。
そう私が主張すると、彼は肩を竦めた。
これ以上答える義理はないと言った様子だ。
『それよりも、圧倒的な力だな。今頃は帝国側のブラックリスト入りであるぞ?』
「構わない」
『ふむ、帝国のスパイという訳ではないのだな』
「疑うようなら、自分脳みそをまず疑うんだな」
この状況で帝国のスパイを疑ってたのか....
私はあきれ果てた。
何様なのかというくらいの傲慢さだ。
『フッ、中々面白い冗談だ』
「それで? 俺の休憩時間を奪って何がしたかったんだ?」
『いやなに、新進気鋭のゴールド傭兵にご挨拶という訳だ』
このエラソーな態度なら、少しは納得がいくけれど....
それでも、目的に比べて態度が弱い。
クロスという名前も偽名臭いし。
「お前とはいずれまた会いそうだな」
『まあ、家に帰ったら招待でもしてやろう』
「御免被る」
私はそう言うと、通信を切った。
クロスは切る直前に、目を伏せて笑った。
変な奴。
「はぁ」
私はため息をつく。
だが、その時背後で扉の開く音がした。
すぐに素に戻って、立ち上がる。
「ノルス」
「お邪魔でしたか?」
「いいや? 何か用か?」
「はい」
ノルスは私に、タブレットを渡す。
タブレットを受け取った私は、それに目を通す。
技術屋気質のファイスの書くレポートではなく、数学的かつ合理的に説明がなされた文体で、アドアステラのスラスターの金属疲労について書かれた報告書だった。
「ほう、それで?」
「いつでもいいので、スラスターの交換作業を行いたいのですが....」
「ああ、予算は俺が出す」
「ありがとうございます」
ちょっと高くつくからね。
ノルスはただでさえ、エナジーバーやエナジードリンクの消費が多くて、尚且つ教材にお金を使っている。
ここは保護者である私が財布の紐を緩めるべきだろう。
『マスター、お時間よろしいですか?』
その時。
つけたままだったディスプレイにポップアップが出た。
そこには、シトリンの名前が表示されている。
「どうした?」
『リドラ上級士官から緊急のメールが届いております』
私はディスプレイに向き直り、メールを一読する。
そして、かなり拙い事になっている事を知った。
「......悪い、ノルス。交換は相当先になりそうだ」
「はい」
ハダウガゴ星系が敵の奇襲に遭っている。
このままでは防御線を突破されかねないが、軍の再編成に時間が掛かっているようだ。
傭兵に招集が掛かるのは、軍が動き始める二日後以降....
『話は聞いたな?』
「なんでお前まで」
その時、通信が届く。
受けると、クロスの顔が映った。
なぜ彼がこのことを知っているのか分からないけど.....
『道中は危険だろう、まあ行くぞ。俺は先にアッカネンゲート前で待機している』
「......勝手に決めるな」
『フン』
通信は切れた。
ああもう、仕方ないか。
「全員、ブリッジに集合せよ。これよりアドアステラは緊急発進の後、ハダウガゴ星系へと急行する!」
私は艦内放送でそう呼び掛けるのであった。
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