162-ガザツ星系へ
私は依頼を受領し、アドアステラの艦橋へと上がる。
そこには既に、仲間たちが集結していた。
「さて、皆揃ったな? 次の目的地と目的を説明する」
「楽しみだね!」
ラビは嬉しそうだけど、こちらも結構命懸けだからね?
ジスト星系での戦闘などを経験した身からすれば、ショートワープが出来ない状況に持ち込まれて引き撃ちされると流石に危ない事が分かっている。
「次の目的地はガザツ星系。隣接するイーディオ星系に帝国軍の基地が建造されたらしく、王国軍側がやや押されている状況にある」
「つまり、その戦闘に参加せよ....との事でしょうか?」
「そうなるね」
ファイスの言葉に、私は頷く。
全員のスクリーンに情報を共有し、道中は完全に安全な補給路が形成されていること、敵の帝国軍艦隊が本来の艦種に比べてはるかに高性能な事を皆に伝える。
「帝国軍の総数は遥かに多い。何故なら、人道的にかなりまずい技術を使っているからだ」
帝国軍の新たに導入した技術は、エミドという文明からサルベージされたTRINITY.の技術を回収したものであり、脳内にインプラントされた装置と艦自体を接続し、パイロットに凄まじい負担を強いる代わりにより高い制御技術を有しているそうだ。
「当然、反応速度も遥かに高い。アドアステラならともかく、ドローンと戦闘機を扱う――――ケイン、ラビ。気を付けろ」
「りょうかい!」
「分かってるよ、その辺は....心得てるから」
ケインとラビは頷く。
「さっきも言ったが、航路は安全だ。味方の指示を聞きつつ動けば危険もない」
「つまりは、いつもより安全という事ですね」
ノルスがそう締めた。
「俺はもう、無茶をする気はない。だからお前たちも、功を焦ったり俺に配慮して死に急ぐなよ」
「「「「「「『了解』」」」」」」
全員が頷いた。
その時、ラビが私に目配せをした。
私は、ラビを連れて艦長室へと上がり、目配せの真意を問う。
「どうしたの?」
「お酒に付き合ってくれない? バーがあったんだけど」
「...俺はまだ酒が飲める年齢ではない」
「ええっ!?」
信じられないものを見た、と言った様子でラビは声を上げた。
「信じられないか?」
「え....成年してないのに、あんなに大人びてて、何でも出来て強いの?」
「悪かったな」
何でも出来るわけじゃない。
私の出来ることは、努力する事。
お兄ちゃんが私から目を離さないように、常に努力し続ける。
常にナンバーワンになれば、お兄ちゃんは決して私を見捨てないからだ。
『ああ、よくやったな』
そう言ってくれるお兄ちゃんは私の全てだった。
でも、今の私は既に一人で生きていける。
だから......それだけがただ怖い。
「まあ、バーには行こう。酒は飲めないが、付き合うくらいはな」
「やったぁ! やっぱりカルは、優しいね」
ラビは蠱惑的な笑みを浮かべた。
全身から色気を放つラビだけど、私は黙ってそれを受け流す。
「じゃあ、行こう!」
「ああ」
幸いにも、奢るくらいのお金はある。
私はラビと共に、アドアステラを降りるのであった。
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