148-戦いの結末
星系軍の突入は、恙なく行われた。
アルゴ達傭兵と星系軍の前衛が、戦艦級の砲撃支援により海賊側の戦力を撃破。
本来であれば兵器の質で負けていたところを、ネメシスがひっくり返した形になる。
『第一~二十二番突入隊、爆破準備完了! 全員エリアから離脱しました!』
『よし、爆破を許可する! 安全を確保後、速やかに突入し制圧せよ! 参加者全員に味方識別コードを付与するので、不要な突入は回避されたし!』
直後、要塞の各所で爆発が起きる。
星系軍の配置した爆薬が、外壁やエアロックを破壊したのだ。
本来そんな事をすれば気密が失われ、中の人間は無事ではいられない。
しかしながら、それは起こり得ないことだ。
なぜならば、要塞の周囲には作業用のフォースフィールドが張られており、それが空気の流出を防ぐのだ。
「おい! 突入されたぞ!」
「ドックはどうなってる!?」
「ダメだ、制圧されてる! こうなったら戦うしかねぇ!」
退路を潰されている海賊側は、必死になって応戦する。
しかし、数も、武器の質も、統制も――――そのすべてが、星系軍の方が上回る。
『六番隊、B-222ブロックを制圧』
『抵抗は見られない、先遣の傭兵が制圧したものとみられる』
『エレベーター前で交戦中。敵の数は少ない、5分以内に排除可能』
二十二の分隊で突入した星系軍の陸上部隊は、人質の救助と残党の制圧を行いながら下層から上層へ向けて、巣穴に流れ込んだ水のように制圧していく。
「クソッ! 相手が悪すぎる!」
「こうなったら、キメラと重機で....」
「ダメだ! 殆ど、あのカルって傭兵に壊されてる!」
「ほんとに人間かよ!?」
星系軍側も、キメラとの交戦の際は人間部分を避けつつ、可動部位を破壊しながら着実に無力化していた。
重機は容赦なく対物兵器の暴威に晒され、即座に破壊される。
戦闘種族による肉弾戦を挑まれるものの、素早く他の分隊が介入し鎮圧され、海賊側はその防衛リソースを急速にすり減らしていた。
『C-Z1型グレネードの使用を申請する』
『容認する』
星系軍の通信が響き、各所で爆発音が響く。
分隊は上層へと突入し、その際にカルと遭遇する。
『突入した傭兵と遭遇! 激しく消耗しており、指示を求める!』
『同行者は?』
『二名と、救出された人間と思われる一名、それから彼らの”仲間”らしきアンドロイド一体!』
『問題ない。回収ポイントC-22まで護送されたし』
『了解』
カル達は突入隊に護衛されながら制圧済みの下層まで運ばれていく。
その際に、
『この人間と交戦したのですか? 敵ではないのですか?』
『今は敵ではない...ただ、洗脳状態にあったのに、強かったというだけの話だ』
『成程! ありがとうございます』
という会話がありつつ。
その頃。
上層外周部に、一人の人間が這っていた。
「ハァ.....やぁっと着いたぜ」
アラバスであった。
右腕を負傷し、全身に火傷を負った彼は、満身創痍になりつつもここまで来たのだ。
彼はふらふらと立ち上がり、操作盤を操作する。
数秒後、彼の隣にある壁が開く。
その先には、コックピットのような空間が広がっていた。
「こっちに道があるぞ!」
「突入せよ!」
アラバスは背後から聞こえる声を聞き、急いで中に入ってハッチを閉めた。
「脱出ポッドだ!」
「破壊しろ!」
「いいや、もう遅い」
彼は、星系軍が武器を構えるより早くポッドを射出させ、片手だけで航路入力を終わらせる。
『こちら第二分隊! 要塞上部より脱出ポッドの離脱を確認! 捕縛か、撃墜を願う!』
『了解! こちら八番艦、七番艦と共に射撃を行う!』
だが、既に遅すぎる。
ポッドはワープドライブを起動し、即座に宙域から離脱する。
「フゥ~.....全く面白い。カル・クロカワか.......その名前、覚えておこう」
彼は、アラバス・サントイオネ。
カルメナス内部組織「トゥルー・カルメナス」所属であった。
これまで内密に陰謀を進め、成功させることの多かったアラバスは、久しぶりの敗北に疲れた笑みを浮かべつつ、復讐とそれによって得られる快楽について、考えを巡らすのであった。
彼の敗北は、カルメナスにとっても不測の事態となる。
カル・クロカワの名は、広く知らしめられていくのであった。
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