144-要塞上層戦
上層を順調に制圧していた私たちだったが、徐々に追い詰められ始めた。
エネルギーパックを海賊から奪い、カルセールでエネルギーを貯めつつ、戦闘を継続してきたのだが.....
まず最初に、シトリンのジェットパックのエネルギーが切れた。
そして、私の方も疲弊が見えてきた。
ファイスはまだまだ元気だけど。
「あんまりやりたくないんだけど」
私はエナジーバーを取り出して食事をし、即座にエネルギーを補給しつつ、主な戦闘をファイスに任せる。
ファイスは底知らずの体力と、人間をはるかに超越した膂力を持つ。
この辺になると、人間種以外の海賊も増えて来たけれど、ファイスには及ばない。
「(よくアニメとかで見たやつだけど、本当に上手くいくかな)」
戦闘中に食事をすることで、エネルギーを即座に体に取り込む手法だ。
出来るかどうかは全く分からないけど、やらずに後悔するよりやって後悔。
「こっちにいたぞ!」
「撃て!」
「邪魔だ!」
手甲のシールドを展開しようとするが、一瞬展開した直後に消えてしまう。
シールドセルの中身がなくなったのか.....
私は銃撃を横っ飛びに回避して、手甲の裏側にある切り替えスイッチで、第二シールドセルに切り替える。
これで、再びシールドを展開できる....けど、次の替えはない。
『マスター、どうしますか?』
「ファイスでもレーザー弾相手には負傷する。だから、このままファイスだけを戦わせることはできない」
『分かりました』
私は物陰から飛び出し、銃撃の嵐を掻い潜って跳躍し、壁を蹴って肉薄する。
そこにシトリンが援護射撃を加え、私の傍以外にいる海賊を撃ち倒す。
「お、お前...本当に人間か!?」
「人間だよ!」
失礼な。
失言をした海賊を、ヘッドロックして地面に叩きつける。
ノルスとは違う種類のタコ頭だったけど、流石にそれで気絶したようだ。
「ふぅ....」
「おいおい、ガロスをやっちまうとはな....これでも準戦力なんだが」
ひと息ついた、そう私が思ったとき。
反対側の入り口から声が響いた。
振り向くと、そこには――――先ほど画面の向こうで見た顔がいた。
「待っていろ、と言ったはずだが?」
「このまま放っておくと、みんな死んじまうんでな....仕方なくってやつだ」
その男は、片手が機械化されていた。
といっても、前世で見た隻腕の海賊とは違って、その先は鉤ではなく大ぶりな拳となっていた。
いやな予感が....
「俺と殺り合おうぜ、カル!」
「肉弾戦は専門外なんだが...」
真っすぐ突っ込んできた男は、その拳を私に叩きつけてきた。
シールドで防ごうとも思ったが、回避を選んだ。
その選択は、正しかった。
「っ....!」
直後、駆動音と共に空気が爆裂した。
あの拳、明らかにそれ自体が武器だ。
「ファイス、シトリン! 先に上を制圧しろ!」
『し、しかし....』
「はっ!!」
逡巡するシトリンを、ファイスが強引に連れて行った。
こいつの相手は手間がかかる。
だから、先に上を制圧させる事にする。
「随分余裕だな?」
「まあな」
相手がカナードクラスでもなければ大抵は何とかなる。
というか、この程度の相手に負けたなんて、その時は何とかなっても、お兄ちゃんに知られたら......
『格下に舐めプして負けた? お前は俺の妹失格だな。情けない、どこにでも行けばいい、出ていけ』
なんて言うかもしれない。
途端に恐ろしくなってきた.....
「震えてるぜ?」
「武者震いだ、行くぞ!」
私はニケを抜き、撃つ。
それと同時に、男は跳躍して私の反対側に降り立った。
「俺の名はアラバス。アラバス・サントイオネ! 参る!」
「...俺の名前はカル・クロカワ....その挑戦、受けてやろう!」
あくまで尊大に、私は彼をニケで撃った。
彼はそれを拳で弾き、ニヤリと笑ったのであった。
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