142-黒幕登場
要塞の中層に入った私たちは、幾つかの部屋を通りつつ探索を開始した。
ここは、所謂キメラの培養施設であるようだ。
培養槽の中で、既存の生物や遺伝子改造で作られたらしい生物と合体させられた人間が眠っている。
「悪趣味な」
少なくとも、ここを破壊すると中にいる人間は死んでしまう。
助けられる可能性があるので、放置して先へと進む。
「行け、ファイス!」
「はっ!」
そして、中央のハブにたどり着く。
中に人の気配があったので、ファイスを先行させる。
直後、射撃音が響く。
「シトリン、援護を」
『了解!』
私たちは同時に内部に突入する。
そこは、複数のデータサーバーを備えた円形の研究室らしき場所で、科学者然とした人間数人がハンドガンを構えてこちらを迎撃していた。
『射撃開始』
「ぐっ!」
「うわぁあ!」
しかし、彼らもまた根っからの研究員らしくて、シトリンのライフル射撃に耐えられるほどでは無かった。
背面のサーバーを破壊しながら室内を一掃したレーザー弾は、そこにいた研究員を一瞬で蜂の巣へと変えた。
「しまった...」
想定より遥かに弱かった。
シトリンに任せず、私とファイスで制圧していれば...
そうすれば、少なくとも有用な情報を聞き出せたかもしれない。
「まあいいか」
『おいおい、随分と派手にやってくれたな?』
私が研究員の全滅を確認したまさにその時。
部屋の大スクリーンが点灯し、見慣れない男の顔が映った。
「誰だ?」
『おいおい、アパルアンで散々殺り合っただろう?』
「いいや、覚えがないな」
アパルアンというと、ローセキュリティ星系だけど...
そこで何があったかな...
『へっ、そうかい』
「お前は誰だ、名乗れ」
私は強く問う。
それで思い出せるわけではないが、後で名を聞けば誰かはわかるかもしれない。
『俺はしがない海賊さ...まあ、カルメナス所属だがな』
「...!」
カルメナス所属。
それというだけで、その存在は大きく価値を持つ。
なぜかと言えば、カルメナスに所属することすら難しいのだから。
ただ行って所属させてくれというわけではなく、ある程度名を馳せた上でカルメナス所属の海賊を襲って旗を奪わないとならないらしい。
『おっと、俺も自分の仕事をしねえとな.....悪く思うなよ?』
直後。
壁面がスライドし、大型の戦闘ボットが現れた。
最初から私に照準を向けていて、完全に現れると同時に突撃を仕掛けてきた。
『プレゼントだ、受け取れ!』
「そうか。上で待っていろ」
『フフ......ああ、待ってるぜ』
映像は途切れた。
戦闘ボットの旋回砲塔が回転し、私の方を向く。
「げっ、実体弾か!」
カルセールで吸い込もうと思ったのだが、撃ってきたのは実体弾であった。
当たる前に後ろに跳び、手甲のシールドで弾く。
「ファイス、後ろへ! シトリン、頭頂部を撃て!」
『了解』
ファイスが下がったところにシトリンがレーザーライフルを撃ち込み、シールドを破壊して沈黙させた。
戦闘ボットは沈黙したが、私は同時に危機感を感じていた。
上層はこれが大量に出てくるのだろうから。
ニケは対兵器の側面を持たないため、シトリンかファイス頼りになってしまう。
「無力だな....」
そんな事を思いつつ、私たちは中層を突破した。
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