136-誓約
えー...結論から言うと、要塞は後者の方だった。
先行ワープで突入した先遣隊とネメシス、アドアステラは展開していた防衛艦隊を撃破、後続の艦隊を呼び込んだ。
だけど...
「戦いはまだまだこれからだ」
その証拠に、要塞のドックから海賊艦が次々と出撃し始めている。
今確認できるだけでも62。
この巨大な要塞からして、こちらと同数の400程度は余裕で詰め込んでいるだろう。
『敵艦隊、左右に展開。こちら側を包囲する陣形のようです』
「突き崩すには?」
『こちらも散開するか...密度の薄い外側の艦を撃沈し翼を崩すかです』
「よし、そっちをやろう...ネメシス!」
『なんだ!』
私はアルゴに呼び掛ける。
すぐに不機嫌そうな声が返ってくる。
「一番奥まで射程内か?」
『いや、手前側の両翼先端にしか届かねぇな』
「それでいい。左右翼の敵を撃って数を減らすぞ」
『分かった!』
私は通信を切り、ファイスに指示する。
「フォートモジュール起動。次に攻撃カーネル起動」
「了解!」
射程を伸ばし、攻撃カーネルで威力を高める。
更にオーバークロックさせて、連射力を大幅に増加させた。
その時、ネメシスから巡航ミサイルが発射され、敵艦隊の右翼に直撃する。
やっぱりランチャーを改造しているようで、連射速度が遅過ぎる代わりにミサイルの飛翔速度が速いようだ。
「こちらも攻撃開始」
『射撃を開始します』
アドアステラの上面レーザー砲から長距離レーザーが放たれ、端の艦を一隻ずつ撃墜させていく。
流石にシールドが厚く、一隻につき三発程度必要だけど――――
『こちらグラーム星系軍司令部。援護射撃は必要か?』
「射程内であれば頼む」
『了解した。優先ターゲットを共有するので、重複しないように注意願う』
「ああ」
星系軍の援護射撃が始まり、シルバー傭兵たちが一斉に突撃を始める。
いい的だが、彼らを止める義理もないので放っておく。
『敵艦隊、陣形を変更します。更に、後続が加わるようです』
「......」
敵の陣形が、十字へと変わった。防御の薄い艦を後部に配置し、シールドが硬い艦を前面に出す形に。
海賊らしくない統率力だ。
「フォートモジュール解除。シトリン、敵艦最後尾までの距離は?」
『およそ132kmです』
「意外と近いな」
アドアステラは改修を経て生まれ変わったわけだが、それでも今までと変わりのないものはある。
それは、CompactJumpDrive....CJD。
これだけは、理論すら不明なので弄れないため、デフォルトの距離100kmから変わることはない。
「うーん......突っ込んでから機動戦に移行するか.....」
32kmを加速で乗り越えるのは、敵の的になる可能性が高い。
悩む私に、その場にいた全員が言葉を発した。
「「「「「『あなたを信じます』」」」」」
「.....えっ?」
「まっ、前に.....みんなで決めたんです。艦長はいつも自分がすごいって思ってないから....もし悩んでいるときがあったら、全員で肯定しようって」
アリアがそう口にした。
私が周囲を見渡すと、席に座っている皆が頷いた。
「....分かった、行こう」
私はCJDを起動する。
そして同時に、別のタブを開いた。
「何でわざわざ改修したか――――そこにその理由が詰まってる」
スリーパードローン戦では使わなかったが、アドアステラのもう一つの機能が存在する。
ジャンプ直後に、それを使う。
アドアステラは光彩を纏いながら、CJDを起動し――――消え去った。
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