124-PORS
アドアステラは、指定された座標に向けてワープしていた。
PORSは独立して浮遊するステーションのため、アドアステラは指定された座標に飛ばなければ、それに入る事すらできないのだ。
『ワープ終了まで、残り二分』
「分かった、皆。荷物は纏めておけ。いつでも取りに戻れるが、戻るのは大変だからな」
アドアステラは、忘れられることが多いが、そもそもそれ自体が数百人を乗せることを前提とした大型艦である。
ドックインさせることは簡単だが、私物を取りに戻ると途轍もない時間がかかる。
それを考えたうえでの発言である。
「わぁ...!」
そして、アドアステラは通常空間に出た。
窓の外を見ていたケインが、感嘆するように声を上げた。
それもそのはず。
小ぢんまりとしたステーションを想像していた一行だったが、PORSは充分に巨大だった。
アドアステラが入港できる大きさのドックがあり、アドアステラは誘導ビーコンに従ってそこに入っていく。
『ガントリーロック成功。エンジン出力を低下させてください』
「エンジン出力0まで低下。機関停止します」
ノルスが機関を停止させる。
これで、アドアステラは完全に停止した。
「よし。みんな、降りるよ」
ファイスが艦内の電気系統を切り、シトリンとアリアがウェポンシステムをオフラインにする。
そして、カル達は全員で下へ降りて、ハッチに接続された橋を渡って中へ入った。
「ここが中央部だよ、宿舎はあっちで、こっちがスパリゾート、あっちがリラックスリゾート、向こうが娯楽センター、あとは...上にレストランがあるみたい」
宇宙に住む人達は、アドアステラほど大きな船に乗ることは少なく、ストレスの多い生活を強いられている。
そのためにこのPORSは存在しており、ただ寝泊まりするだけではなく、一日の生活をより豊かに過ごせるようになっているのだ。
「とりあえず、最初に荷物を置こう」
「はーい!」
一目散に、ケインが宿舎に向かっていく。
全員で長い廊下を抜けると、
「わぁ...凄いですね」
「多分、ここが中央部屋なのかな?」
床はクッションで、部屋の中央には光る巨大なラバランプがあった。
その周囲に円形にソファが置かれており、周囲の三つの壁には、それぞれ二つの扉が付いていた。
部屋の端には小型の昇降機があり、上にも部屋があることが確認できた。
「じゃあ皆、解散! 扉の前にプレートがあるから、そこに名前を入力すれば部屋を登録できるよ」
「「「「了解!」」」」
カルは、入り口から一番近い左の手前の扉を選んだ。
プレートにカルと入力し、扉の開閉スイッチに触れる。
「おお...」
室内は、これと言って特徴はなかった。
奥に二人サイズのベッドがあり、冷蔵庫、小物入れ、サイドテーブルがあり、壁面にはホロディスプレイがあった。
一般的な個人用客室といった様子だ。
カルはベッドに倒れ込み、足をしばらくバタバタとさせた後、
「お風呂行こうかな」
と言った。
カルはホロディスプレイを起動して、アメニティ配送を選んだ。
直後、タオルと洗面具が、部屋の壁面にある配送ボックスに届けられる。
配送システムを使えば、基本的にPORSにいても自由に買い物ができる。
その分割高なだけである。
カルは洗面具を抱えて、スパリゾートエリアへと向かった。
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