121-身の丈に合わぬ栄誉
結局。
派手な花火によってスリーパードローンは壊滅し、ポケットの主が居なくなったことによって空間が崩壊し、私たちはまとめて通常空間に放り出された。
敵の残骸がそのまま手に入ったので、シラードはホクホク顔であった。
そして、それから二週間後。
「うう.....緊張するな」
「主人、貴方は自分の誇りです。十分胸を張るべきです」
「...ああ、分かった」
私は立ち上がる。
観衆の下に出る性質ではないのだが、功績が大きくなり過ぎた以上仕方ない。
「......落ち着かないな」
「安心していい、この場にいるのは貴族だけだ」
「それを勘弁してほしいという訳なんだが」
ジスティアンコンステレーションに居る全ての貴族が集められ、私に勲章を授与するシラードを見ている。
シトリンによると、これは異例の事のようだ。
「では、これより勲章を授与する! 言っておくが、銅剣翼突撃勲章だけではないからな」
「!?」
これ以上何があるというのだろうか?
困惑する私に、シラードが功績の発表を開始した。
「この者は、このジスティアンコンステレーションにおける防衛戦に置いて、多大なる功績を上げた! その功績は旗艦センティネルをも救い、未来に於ける活路を切り拓く事となった! 特に大きいのは、単身敵の本拠地へと突入し、その後の挟撃戦に置いて敵の首魁を撃破、敵の無傷の鹵獲など大いなる功績を持って報いた。よって、銅剣翼突撃勲章を授与する!」
ここまでは予定通り。
それにしても、知らないうちに功績が増えたような気がする。
これはもしかして、パシリに使ったのはこれでチャラな! 的な言い分なのだろうか?
「次に! この者はジスティアンコンステレーション全体で行われていた大規模な海賊行為の根絶、誘拐・奴隷売買の阻止、その主だった面々の逮捕及び無力化に大いなる貢献をした! よって、銀盾翼守護勲章を授与する!」
剣と盾が揃った。
それは、私にとってというよりは、この場にいる面々にとって大きな衝撃だったようである。
ざわめきが広がり、徐々に私に視線が集まってゆく。
「どこにつければいいんだ?」
「とりあえず、左胸と規定で決まっている。その後はどこにつけようとお前の勝手だ」
私が女性だからと気を使っているのかもしれないが、下心があって触ったなら張り倒すけど、今回はそうじゃないので胸を張って早くしろと訴えた。
シラードは私のマントの中、パワードスーツの左胸に勲章を張り付けた。
電磁装着型で、スイッチの切り替えによってくっ付くかくっ付かないかを選べる。
「無くしても、それはお前のIDと結びついているから大丈夫だ、あまり気にせず扱うといい」
勲章の窃盗や捏造、盗用は重犯罪であり最悪銃殺、電気椅子である。
譲り受けた、という事が立証できれば無罪放免ではあるが。
「勲章の授与者には、1500万MSCの賞金が与えられる。お前の場合は二枚で3000万MSCだ」
ええと、3000万MSCだとすると、仲間で分配して.....
6人だから一人500万MSC。
船の一か月の維持諸経費が123万MSCで、私の純粋な所持金が5202万MSC。
5702万になるから、傭兵の貯金平均の500万MSCを遥かに上回っていることになる。
「(そろそろ何かに使うか?)」
船の一般的な値段が、フリゲート20万~巡洋艦1200万MSC程度である。
戦艦クラスとなると、軍や大企業の工場と交渉する必要があってゴールドランクになりたててでも厳しい。
「――――聞いてるか?」
「ああ、勿論」
話が進んでいたけれど、ちゃんと中身は頭に入っている。
銅剣と銀盾の勲章は私を守ってくれると同時に、私の鉾にもなる。
勲章受章者を攻撃したり、害そうとするものに対して、勲章を持つ者は対等な裁判を起こして対処できる。
そして、特例だが剣と盾を両方、種類にかかわらず持つ者は、軍関係の内部任務を遂行できる権限が与えられるらしい。
「それでは、これより解散とする! 勲章の受章者に、再度拍手を!」
心のこもってない拍手を浴びつつ、私は舞台裏に下がった。
「終わりましたか?」
「ああ。報奨金が振り込まれるから、分配をシトリンに頼んでおこう」
「.....はっ」
そういえば、ファイスは貰ったお金を何に使っているんだろう?
今度のその辺の調査もしておかないとと、私は思うのだった。
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