SUBPAGE-002 アラッドとの夕食
戦いから帰還して一週間後。
私とファイスは、ジストプライムの病院を尋ねていた。
誰に会いに行くかと言えば、当然......
「ああ、カルか.....見舞いありがとう」
「弟の容体は?」
「まだだ......脳が侵蝕された状態で分離したから、その治療だけで数年かかるそうだ」
「......治療費は?」
「信じられんが、シラード様が全額負担してくださると」
多分、私への配慮だろうか?
それとも、アラッドが唯一のジスト星系シルバー三位だからだろうか。
継続して貢献してもらうために、治療費を負担したのかもしれない。
どのみち貴族のポケットマネーからすれば、微々たる金額だろうから。
「.......治りそうか?」
「正直、治ったところで記憶障害を患うかもしれない」
「そうか」
ちょっと報酬の話には持って行き辛いな。
でも向こうが気にしているかもしれないし、
「俺はあまりこの方式が好きではないんだが......報酬の件は、期限未定の貸しにしておこう」
「やはり、最後の参戦では足りなかったか.....」
「ああ」
あれは嬉しかったが、やはり彼の力が最も活きる局面ならば充分な価値があったと思う。
だからこそ、報酬はまた先送りすることにしたのだった。
見舞いに行った後、私たちは帰り道の彼を誘い、ファミリーレストランみたいな場所での夕食となった。
当然私はトマト風味煮込みスープ料理を頼み、ファイスは肉食種族用の巨大ステーキを、アラッドは茶だけ頼もうとしたが、私がディナーセットを奢ってあげた。
「弟が大変なのに、俺だけこんな.....」
「心配ばかりして体調を崩したら、それこそ弟に悪いだろう」
「そうかもな....フフ」
アラッドは少しだけ余裕が出来たのか、笑いを漏らした。
本来の彼の性格はそんなものなのだろう。
「今回は付き合わせて、本当に申し訳なかった」
「大丈夫だ。こちらも、目的と兼ねて行えたからな」
カナードの真意を確かめる。
確かにその目的は達成された。
「それよりも、念願のゴールドランクだぞ? もっと喜んだらどうだ」
私はアラッドにそう言った。
「.....それこそ、お前はどうなんだ、カル?」
「社会的に信用のないシルバーよりは動きやすくなるな」
「そうではなくて。ゴールドランクともなれば、指名依頼も舞い込んでくることになるが? それに、勲章も授与されるという話も聞いたが......」
「それは、そうだな....」
ゴールドランク自体は、プラチナランクの忙しさに比べれば、シルバーに毛が生えた程度である。
しかし.......そう、私は勲章を貰うのである。
これが単独依頼ならともかく、星系軍の公式召集という衆人環視の環境で危険に身を晒しまくったので、シラードが勲章を授与しなければなくなった。
その名を、『銅剣翼突撃勲章』。
「何故か、俺だけなのだが....」
「単身ワームホールに吸い込まれて生き残った面々のリーダーに、勲章を与えないでどうする? おまけに、お前の船は前線においてシラード様の命をも救ったのだから」
そうかな......
そういえば、感謝はされた覚えがある。
「主人、ところで.....」
「ん?」
「話し込んでいるようだったので控えておりましたが、先ほどラストオーダーの通告が....」
もうそんなに時間が経っていたとは。
私は伝票を取り、立ち上がった。
「行くぞ、アラッド」
「ああ。またの機会に.....」
会計を済ませて、私とファイスはアラッドと別れる。
「勲章を貰ったら、次の目的地を決める予定だ.....だから、会うのは多分これが最後だろう」
「連絡コードは交換した、いつでも遊びに来てくれ」
こうして私たちは、別れた。
短い付き合いだったが、そこそこ楽しかった。
いつかは目を覚ました弟とも会えるかもしれないなと、私はひそかに思うのだった。
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