118-最奥部
そして、アドアステラは。
敵の巣の中に突っ込んだ。
読みが当たり、攻撃は止んだ。
止んだが...
『こちらに向けて接近する反応あり。歩行型ドローンかと思われます』
そりゃあ、突入型がいないわけがない。
そもそも、ドローン艦隊の中にいた突入型は、この小型ドローンを満載しているもので、船に突入して制圧、その後船をお持ち帰りして巣の材料にするというものだった。
『敵のドローンに対して試射を行いましたが、シールドは外部の物よりは薄いようです』
「成程」
こうして、アドアステラは敵のど真ん中で小型ドローンに群がられ、巣の材料にされてしまうわけだが...
「勿論、そんなことはさせない。シトリン、ファイス、行くぞ」
「はっ」
『はい』
「......ケイン、お前は艦内に敵が来た場合、常設のレーザーライフルでみんなを守れ」
「うん!」
「アリア、外部パルスレーザーの操作はできるな? ケインも、ドローンを狭い範囲で動かして防衛を行え」
「はいっ!」
「ぼく、頑張るよ!」
最後は...ノルスか。
「ノルス、機関部を頼む...それがないと、逃げることもできないからな」
「お任せあれ」
ノルスは恭しく礼をした。
どこで覚えてきたんだろ、そんなの...
毎度恒例の別れの挨拶を済ませ、私たちは格納庫から外へ出る。
私とファイスはそれぞれ船外活動服を、シトリンはそんなもの必要無いのでそのままである。
活動服のヘルメットは、ファイスの犬頭でもフィットするものがあって驚いた。
周囲はすべて、まるで生きているかのような機械のパーツの集合体だ。
暗闇から迫ってくるドローン達の足音が、真空のこの場所でも聞こえてくるようだった。
その時、暗闇に閃光が走り、直後爆発が巻き起こる。
『ここはぼくらが倒すから! 先へ行って!』
声に従い、私たちは先へと突き進む。
そして、通路の先の群れは、シトリンがライフルで薙ぎ払う。
『カナード.batはワタシの機能強化を施しましたが、船外戦闘や武装の扱いについても大幅に強化されたため、こうしてお役に立つことができます』
ライフルでシールドを剥がし、その後足を狙い、更に足を破壊したあと武装を。
そうする事で、より効率的に足止めをしているのだ。
そして、掃除を務めるのはファイス。
敵の方へ突っ込み、新装備のエナジークロウとアサシンブレードで敵を薙ぎ払う。
どれも正規品にカナードがドローン武装を参考に改良を加えたものであり、練習用くらいにしかなっていなかった二つが攻撃性能を持っている。
エナジークロウはエネルギーを成形して爪の形にしたものであり、それ自体に切断の力があるほか、伸縮自在でリーチも自由自在だ。
...その分エネルギー消費も増えるけど、省エネは実現されていて、小型エネルギーパック二個で十分戦える。
アサシンブレードは、要は仕込み武器だ。
刺突系で、極薄のエネルギー刃で敵のシールドを突いて破壊する。
勿論対艦のシールドは無理だけど、建造物や戦闘ボットくらいのシールドなら抜ける。
『自分ばかりが新装備を使っても良いのでしょうか...』
『いいよ、これが一番気楽だし...ねっ!』
バック転で敵の射撃を回避して、ニケを撃つ。
擬似三点バーストみたいな事が、ニケの連射力ならできるのだ。
シールドに一撃、次の一撃で破壊、最後の一射で装甲にダメージを入れられる。
何にせよ、この場合シールドさえ壊せばシトリンが撃ってくれる。
こうして私たちは、回廊を突き進んだ。
そして――――
『凄い穴だな』
『熱源反応はこの真下ですね』
とんでもなく深い穴が、私たちの前に待ち受けていた。
スリーパードローンはこの穴を昇ってきているようだ。
『どうする?』
『一本道ですからね.....降りるほかないのではないでしょうか』
私たちは通信でやり取りする。
となると、やはりここを降りることになるわけか.....しかし、ここは何故か、普通に慣性制御下にある。
下手に降りると、大怪我じゃすまない。
『でしたら、自分が先に降り主人を受け止めます』
『.....出来るのか?』
『狼人は、この程度では怪我しませんから』
それに、貴方に鍛えられたから.....という呟きは、通信機の無駄に高い感度によって、しっかりと私に届いた。
『じゃあ、行け』
『はっ!』
直後、ファイスとシトリンが先に降りて行った。
数拍置いて、私も飛び降りる。
対レーザー装備のマントが上に向かってはためく。
そして、そろそろ怖くなってきたころ、下が見えた。
ファイスが地面を蹴って私の元まで跳躍し、しっかりと受け止めた。
落下の勢いが、ジャンプの勢いで相殺されて、ファイスは残りの勢いを喰らって地面に落下する。
『グオオオッ!!』
ファイスの足が地面に埋まるものの、無事に私たちは着地に成功した。
『さて......ここからどうする?』
『対話に応じるようなものではないかと思いますが?』
私たちの前には、不気味なオブジェがあった。
様々な機械のパーツが乱雑に絡まり、その中央にある何かを覆い隠しているように見える。
そして直後、天井からぶら下がっていたコードの一つの先端が、こちらを向いた。
『来るぞ!』
私たちはバラバラに跳躍し、そして戦闘が始まった。
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