107-アドアステラ到着
シラード率いる対スリーパー艦隊は、アルカ星系へと向かうためにネセト星系へとジャンプした。
だが、その戦況は良いものとは言えなかった。
何故か?
それは、スリーパードローンの強さを見誤っていたからである。
その強力なシールドと、無比なる攻撃力と命中精度により、コルベットやフリゲートでは相手にもならず、駆逐艦や巡洋艦でも盾代わりにしかならないのだ。
巡洋戦艦や戦艦を持っているのは、軍と一部の傭兵だけであり、それらの斉射によってやっと一機を倒せる状況である。
「クソッ、一体何体いるんだ!?」
叫んだのは、アルゴである。
彼の持つネメシスは戦術巡洋艦ではあるものの、ミサイルは巡洋戦艦用のヘビーミサイルの為に、スリーパードローンと互角に戦えていた。
だが、そのシールドは既に消失し、装甲だけで何とか耐えている状況であった。
ネメシスはその巨体で誤解されがちだが、アルゴのいるブリッジ区画以外はすべて飾りのため、ドローンの射撃にも耐えていた。
そのせいか、周囲の巡洋艦乗りたちの士気もまた、ぎりぎりで維持されていた。
「ゼーレン、どうなっている?」
「数が多すぎますな、閣下」
旗艦センティネルを含む星系軍の戦艦艦隊が、スリーパードローンに攻撃を仕掛けているものの、射程を無視した長距離射撃で数を減らされ続けていた。
「おまけに、TRINITY.共も協力を願い出ませんから...」
「あいつらの事は放っておけ、俺が土下座して協力しろと言うのを待っているだけだ」
TRINITY.は警察組織であり、防衛には加担しない――――そんな言い訳を盾に、協力を拒んでいるのだ。
実態は、戦闘が終わる瞬間に参戦し、手柄を奪うつもりである。
もし星系軍が負けても、「戦闘が激化する中民間人を守りながら戦う事が出来ず、シラード伯爵に頼まれ仕方なく撤退した」という言い訳をして離脱するつもりなのだ。
「だが....まずいな....ここを抜かれると、ジスト星系に奴らが流れ込むことになるぞ」
それだけではない。
スターゲートから近い場所で戦っているので、ワープ距離を指定できないワープドライブでは、一度にゲートまで飛ぶのに時間がかかる。
そのまま撤退すると、敵に背中を見せることになってしまう。
「全軍を連れて来たのが仇になったか.....!」
シラードは自分の判断ミスを後悔した。
既に解放軍側の被害は無視できないものになっている。
その時。
スリーパードローンの艦隊に、異様な動きがみられた。
そして、
「ッ、スリーパードローンの攻撃対象がこちらへ集中! 他の攻撃艦を完全に無視していますッ!」
全てのスリーパードローンの射撃が、センティネルへと集束した。
「シールド低下! シールド低下!」
「閣下!」
「くっ、撤退は....間に合わないか!」
かくなる上は、進行方向に対してワープする他ない。
だが、センティネル級は主力艦である。
ワープ距離は短く、この場での即時ワープだと、敵陣に突っ込んでしまう。
「こうなれば....」
敵陣の中で自爆するほかないかと、シラードが決意を固めた時。
ブリッジのモニターから見えていた後方のゲートが光を放つ。
「何!? ゲートは封鎖していたはず....」
直後、ゲートから何かが飛び出す。
それを、センティネルのレーダーが捉えた。
「未確認艦、速度を増加させています! 船籍タグ、AD-Astra!」
「.....カル!」
シラードが呟く。
ここに彼がいるということは、全てに決着をつけ戻ってきたということである。
そしてそれは。
シラード達の勝利であるということでもあった。
「全艦に通達! アドアステラを援護せよ!」
「閣下、あの船はそれほど強い船というわけでは――――」
「俺の親友の友人の船だ、弱いわけがない! これで負けたら、笑いものだがな!」
シラードは、高速でセンティネルの横をすり抜けるアドアステラを見て、呟いた。
「.......任せるぞ、カル」
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