105-消えた記憶
夢を見ていた。
私は文武両道全てにおいて完璧な存在になって、何もかもを思いのままにする権力、財力。全てを手に入れて、お兄ちゃんの前に立っていた。
「お兄ちゃん、私、こんなに立派になりました!」
「そうか......じゃあ、俺は要らないな?」
「そ、そんな事....」
次の瞬間、お兄ちゃんは霧の中に消えていくように、薄くなっていく。
「忘れるな、俺はお前の兄だ。だからこそ、俺の愛は尽きることがない。お前はお前の道を往くべきなんだ」
「お兄ちゃん.....そんなこと言われても.....」
完璧な存在になっても、お兄ちゃんは応えてくれない。
よくやった、それでこそ俺の妹だと、誇ってくれない。
だったら、どうしたらいいの?
「これは夢だ。お前もそれは分かっているんだろう?」
「....うん」
これは夢だ。
私は完璧でもないし、全てにおいてトップではない。
その途端、靄が掛かっていた周囲が、見慣れた家の内装に変化する。
「忘れるなよ、俺はお前を愛してる。でも同時に、俺なしでお前が生きていけるか心配なんだ」
「私、お兄ちゃんがいなかったら!」
「大丈夫、きっと会えるさ」
そう言うと、夢のお兄ちゃんは消えた。
後には、私だけが残された。
「.......行こう、私を待ってる人がいる」
きっとこれは、私の都合のいい妄想かもしれない。
でも、お兄ちゃんは私に、妄信的になるなと伝えたいのだと分かった。
ただ信じることは力ではない、近づけば遠ざかる目標として見るべきなのだと。
「ん......」
目を開けると、激痛が襲ってきた。
左腕が固定されているみたいだ。
「....ここは?」
周囲を見渡すと、ここがどこかすぐに分かった。
アドアステラの、私の部屋だ。
壁一面に、お兄ちゃんがSNOで取ったトロフィーが並べてある。
「たまには磨かないといけないかな」
私がそう思っていると、ドアが開いた。
ファイスだ。
彼は入室して私を見て、すぐに駆け寄ってきた。
「主人!! お目覚めですか!?」
「うん....痛たたたた!」
「あまり動かれませんよう.....左腕を骨折していましたので、ナノマシン修復剤で修復したばかりなのです」
「あー....分かったよ、それで、何日寝てた?」
「二日です」
二日......中々まずいかも。
どれほど戦線が下がったかも分からない現状だけど、少なくとも一日は動けない。
「そうだ、カナードのデータは回収した?」
「はい、手筈通りに......主人の端末から見れるはずです」
「ありがとう」
私はお礼を言う。
訳も分からないまま、パスワードを入れてくれたんだから。
「.....ところで、主人」
「何?」
「あの力は、一体?」
「あの力って?」
「カナードをねじ伏せたあの力です!」
「え? カナードは私とファイスで倒したでしょ?」
私とファイスの完璧なコンビネーションで、カナードの圧倒的な身体能力を圧倒して勝った。
苦しい戦いだったけれど、この傷だけで済んでよかった。
「そ、それは........はい、その通りです」
「変なこと言わないでよ....」
「では、どうされますか?」
「進路をジスト星系へ。有事の際はファイスに戦闘の指揮を任せる――――私はカナードの残したデータを閲覧するから」
「分かりました」
私は部屋のモニターに、カナードの残した”父親との軋轢”そのデータを投影する。
さあ、何があったのか見せてもらおうかな。
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