100-救命
無言でソーラルを撃とうとしたカルだったが、
「何のつもりだ」
アラッドが立ちはだかる。
「撃たないでくれ」
「撃たなければ倒すことができない」
「それでも、あれは俺の弟だ! 足を潰すなり、方法を模索することだって...」
「甘えるな...と言いたいところだが」
カルは腕を組み、対象を観察する。
「かなりエネルギー効率の悪そうな体だ、一通り暴れさせれば、沈黙するかもしれないな」
ソーラルの腕は意味もなく大きな翼に変えられているため、攻撃手段は脚だけとなる。
カルはそう考え、口にした。
「だが。もし、この遅延行為でファイスや俺が傷ついたら...あとは分かっているな?」
「...ああ、分かった。行こう」
二人が会話を終えると同時に、キメラはまずファイスに足を振り上げた。
ファイスはコンバットバトンを収納し、警棒を抜いて脚撃を防ぐ。
その隙に、カルとアラッドはそれぞれ逆側を周る。
「喰らえ」
「済まない...!」
二人の射撃が、太い脚を同時に撃ち、脚の一本が砕け散る。
バランスを崩したキメラだったが、
「やったぞ!」
「いや、まだだ!」
脚が急速に再生したことで、キメラは再び起き上がり、アラッドに攻撃対象を変える。
アラッドは回避に徹するが、予想以上に動きが速く回避できない。
「ガルルルルァ!」
その時、横からファイスが割り込み、脚を弾き飛ばしてアラッドを守る。
カルは広間を駆け抜け、壁に向かって跳躍。
そのまま壁を蹴ってさらに跳躍し、キメラの上部へ回り込む。
「これくらいなら構わないだろう?」
カルは拳を振い、キメラの本体であるソーラルを殴り飛ばした。
だが、キメラ自体は全く揺るがない。
「やはりな...アラッド! これは無理やり接続されているだけで、上と下は全く別の生物だ!」
「つまり...元に戻せるのか!?」
「分からないな...ただ、一瞬。一瞬だけ動きを止められれば...」
カルがそう言った時。
ファイスが二人から最も離れた場所まで駆ける。
そして、
「ウォオオオオオオオオッ!!」
大きく吼えた。
それは空気をビリビリと振動させ、ほぼ確実にキメラの注意を引きつけた。
キメラは緩慢に動きつつ、ファイスを狙う。
酥の一瞬に賭け、カルはキメラの身体から降りつつ、カルセールを抜いた。
チャンスは一度だけ...というわけでもないが、
「一発で決める...!」
射線に一切変化はない。
カルは構えたカルセールの引き金を引いた。
そして、キメラとソーラルの接合部を撃ち抜き...直後、ソーラルの身体が宙を舞う。
「アラッド!」
「ああ!」
アラッドはソーラルの落ちてきた身体を受け止めた。
「カル...その」
「急いでそれを刺せ、時間が無いぞ」
カルは、簡易型の注射器のようなものをアラッドに投げ渡す。
アラッドは躊躇せず、注射器をソーラルに突き刺す。
直後、ソーラルは苦しみ出す。
「カル!? これは...?」
「急速再生ナノマシンだ、下半身の接合部を元に戻し、侵蝕された脳の破壊をある程度食い止めてくれる」
元に戻す、とは言っても、脚が生えてくるわけではない。
カルはファイスを呼び、
「アラッド、後詰めを頼んだ」
「......あ、ああ。死ぬなよ...お前は俺の、恩人だ」
「ならば、一生賭けても報いて見せろ」
傲慢とも思えるほどの自信を以ってカルは生きて帰ることを宣言して、ファイスと共に研究所の深層へと向かうのだった。
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