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帰世部  作者: 凛快天逸
7/19

二人同時の転校生

 蝉しぐれの音は、2つのクロスバイクの音によって掻き消された。


 日本という美しい国には、当然ながら、美しい諺が存在している。それは時空という試練を乗り越えて、現代そして未来の人々に対して、知恵の教授を恵む為に存在するとともに、それは歴史に対して振り返りの機会をも与えてくれる先人達の宝である。

一度ある事は二度ある。また、二度あることも三度ある。そして、三度あることだって四度あり、遂に無限に続いていく。

 そう。この一見するとあまり何も深遠さを感じられない言葉には、実は深淵さが含蓄されているのである。歴史は繰り返すという、あの名言に、このような単純な言葉にも聯関性という要素を加える操作を行う事によって、深遠なる人類の事実に別の角度からまたしても辿り着いてしまうのだ。


「まさか、今日も転校生?」

 俺は、隣の席に座る幼馴染である姉岸舞に、話しかけた。

「さあ。誰か遅刻してきたんじゃない」

 なんて事を話していると、廊下から鼻歌が聞こえてくる。この陽気な声調には聞き覚えがある。


「なんと今日も、転校生がきまーす!」

 ガララという音を立てながら扉を引っ張って、大ニュースとともに、担当教師が教室に入場してきた。

「転校生!?」

 突然のニュースに一生徒が声を上げた。


「ええー!誰だろう」

「イケメンかな?」

「天才かな?」

「それとも、救世主?」

 転校生という話題に盛り上がりを見せる教室。




 それから一分経過。

「えっと次は、帰神君」

 出席確認が進んで、俺の番にまで回ってきた瞬間。

「はい」

 と返事をすると、扉ががらがらと引き開けられる。


「す、すいません。遅れました!」

「す、すいません。遅れました!」

 言いながら、教室に入ってくる一人の生徒の姿があった。いいや、今回は二人だった。あまりにもピッタリと息のあった登場をしてくるので、思わずそう思ったのだ。


「あ、やっときた。ほら、こっちきて」

「あ、やっときた。ほら、こっちきて」 

教師が教卓前にこいと、手でジェスチャーする。彼女もそれを二度繰り返した。その意図は俺にもよく分からない。だがそうしたのだ。


「うわ、イケメンじゃないじゃん」

「あっちは眼鏡だし、そっちはマッチョだし」

「うーん、うん」

 という感じで盛り上がりを見せることはなかった。



「えっと、ごめんなさい、帰神君。それじゃ途中なんだけど、転校生の紹介をしますねー」


 カツカツカツ。

 カツカツカツ。

 という快活な2つのチョークの音が同時に、黒板を連続的に刻みつける。鯵剣はチョーク二刀流という能力を発動させながら黒板に、豪田建、数野悠、と書き殴った。そんな離れ業に見惚れながら、二人は自己紹介を開始した。


「えっと、僕の名前は、数野悠っていいます。ちょっと父の仕事の都合で転校してきました」

「えっと、俺の名前は、豪田健っていいます。ちょっと父の仕事の都合で転校してきました」

 あまりにも阿吽の呼吸での自己紹介に対して、教室中は絶句した。それは芸術的な領域にまで達していて、正直、一人だけの自己紹介なのではないか、とまで思わせるものだった。もちろん彼らが転校してきたという普通ではない出来事を荒波を立てないようにと、出来るだけマスクする為にそうしたのだろうけど。


 それから二人は俺の席の隣、つまりは教室の最後列の中央部分に二人が席を当てられたのだ。


 五人揃った転校生。

 そして帰宅部の活動は本格化していく。

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