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堕天のセイラ

 堕天の魂。

 

 その後も繰り返される魂の負の連鎖に、魂は行き場を失い・・・そして闇落ちした。

 女神は、この事を知ると憤りの表情をみせる。

「いかなる試練をも乗り越えてこそ純真の魂」

 現世の器はそれに抗い続ける。


 

 背後に迫る影※夜話#4



 はあはあはあはあはあはあ・・・。


 ははははははははははははははははははははははははははははは!。


 仕事帰りの若い女性は懸命に夜道を走っていた。

 背後から奇声ともとれる笑い声が迫る。


 ずっと以前から気配を感じていた。

 だけど、彼女は内気な童貞男の悪さと気にしていなかった。

(よりによって、こんな大胆に来るとは・・・)

 今は後悔していた。


 はぁはあはぁはあはぁはあ。


 あはあはあはあはあはあは。


(ぜったいヤベー奴じゃん)

 

 どんどん暗くて細い道へと追い詰められていく。

「ぜったい、じぇーったい、逃がさないぞ。ひゃひゃひゃひゃ」 

 男は興奮しているのか、声はうわずり声まで発するようになっていた。


(マジキモイ・・・あ)


 暗い裏路地の先は行き止まりだった。


「・・・・・・」


「ふふふふ、永遠にボクのモノになりなっさいっ!」


 ギラリ。

 白刃が煌めく。

 次の瞬間、ナイフが彼女の胸に刺し込まれた。


「手ごたえアリっ!ぐふっ、ぐふっ、これで一緒、せいらたんとずっと一緒」


 彼女は鮮血を散らしその場に倒れ込んだ。

 ドクン!

 刹那、彼女のもうひとつの姿が現れる。


「ふっふっふー、やった。やった。やったぞー」


 男は狂気乱舞小躍りをしている。


(・・・・・・)

 

 彼女はじっとその姿を目に焼きつけた。


「やった。やってやったぞー。さっ、せいらたん、さっ一緒にお家に帰るでござる」


 男は背後の屍に声をかけた。


 ゆらり。

 男は気配を感じる。

「へ」

 ゆらり。

 ゆらり。

 

 恐る恐る振り返るその先には、確かにやったはずの彼女がいた。


「そんなバナナ」


「ふふふふふはははははは。我は不死堕天のセイラ。我に死を賜おうなぞ片腹痛し」


「あわあわわわわ」


「よっては、貴様にもっとも相応しい死を授ける」


 男はその氷のような瞳に見つめられ、金縛りにあう。


「Soul steal(魂略奪)」


 魂を抜かれ、白目をむく。


「・・・・・・」


()ぜろ!」

 

 セイラは広げた右手を固める。


「ギャフン、ブッシャー、あばばばばばばばばばっ!」


 断末魔の叫びをあげ、身体中から鮮血がほとばしるシルエット。

 

「ふふふ」


 セイラは不気味な笑い声を残し夜陰に紛れ去って行った。

 物言わぬ躯だけが、そこに残された。

 男の無残な姿が発見されたのは翌日の朝だった。




 女神は激昂する。

「純真なる魂がっ!堕天するとは何事っ!」

 神の御業により堕天の器と魂が刹那に切り離される。

 魂は矯正を受ける。

 まあそうなるよね・・・次話へ。

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