The darkness Princessはじまり
セーラの物語がはじまる。
生誕
生まれる。
穢れ一つない、まっさらな純真の魂。
女神は微笑み、魂に生への祝福を与える。
さぁ、お行きなさい。
あなたしか描けない物語をはじめるのです。
贄の魂~夜話#12
辺境の小さな村に祠があった。
村人たちの信仰を一心に集め、信心深い者達は毎日祈りを捧げる。
その日がやってきた。
皆が寝静まった深い深い夜。
小さな明かりの灯る祠に通される。
美しい衣装に着飾った幼子が、たどたどしい動きで儀礼をおこなう。
濃厚な甘い匂いの立ち込める空間で、倣ったばかりの踊りを舞う。
神に捧げる踊り。
母に教えられるまま、一生懸命に覚えた。
踊りの後は、高坏に注がれたものを飲めと言われていた。
濃厚な香りのする場で、必死に踊った彼女は、喉の渇きを潤す為に、ごくりと一気に飲んだ。
かあっと全身が燃えるように熱くなった。
次の瞬間、ぐらり。
目の前が闇に堕ちた。
幼子は気を失ったのである。
ざくっざくっ。
山を登る複数の足音。
あたたかいぬくもりを感じる。
幼子はそのぬくもりが父の背中であることが、すぐ分かった。
両親はずっと泣いていた。
すすりなく声で、幼子は母もいることに気がついた。
嬉しい気持ちになる。
山の奥の奥まで進む。
あたたかい、あたたかい。
幼子は常にぬくもりを感じていた。
雪崩のおきそうな場所、氷のカンバスを抜け、3人はついに果てへとやってきた。
ぽつんと廃屋がある。
朽ち果てた小屋に幼子は降ろされる。
両親は抱きしめ愛娘にキスをする。
そして夕暮れ前に別れを告げた。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
幼子はぼんやりと目を開く。
分かっている。
あたしはわかっている。
わかっているよ。
じっとしてる。
ありがとう・・・でも。
彼女は意識を深遠へと預ける。
深い深い永遠の眠りへと・・・。
あたしの最初の物語がこれ?ねぇ神様うかばれないよ。
女神は純真なる魂に語りかける。
「あなたの物語は、はじまったばかりです」
次の物語へ。