ナルさんとタマさん
ナルさんは吠える。
めっちゃ吠える。
いつも通る小学生に向かって吠える。
いつも来るガス缶交換業者の方に向かって吠える。
とにかく家族以外は全員に吠える。
毎日見かける人間に関しては、いい加減に吠えるの止めればいいのにと私は思うのが、
ナルさんは、それでも吠える。
そんなナルさんが家族なのに唯一吠えるのが、同じ家で飼われている老猫タマさんである。
溝に落ちてた所を拾われたタマさんは、すくすく育ち、近所をよく散策していたのだが、
最近は、お年だからか、家の中からあまり出て来ない。
それでも時折、暖かい日などは、ふらりと外に現れたりする。
ゆえに、タマさんの出現は大変貴重である。
よって、私はタマさんを見つけると、
ナルさんに「ごめんね!タマさんに会えるのはレアなんだ!」と謝ってから、
タマさんを構い出す。
タマさんは、喉を掻いていると、ゴロゴロ言いながら「もっと力を入れろ!」と喉を押し付けてくる可愛い子だ。
当然、怒るナルさん。
めっちゃ吠える。
とにかく吠える。
そんな日常が続いていたある日のこと。
ナルさんはミルクを飲むのに夢中で、タマさんが近づいていることに気付かなかった。
珍しく静かだなと思って、タマさんがナルさんに接近するのを眺めていたら、
タマさん、躊躇なく、ナルさんが飲んでるミルク皿に横から顔を出し、一緒に飲み始めた。
びっくりするナルさん。
次いで事態を把握し、怒るナルさん。
何食わぬ顔で、ミルクを舐め続けるタマさん。
いやいや、さすがにこれはナルさんが吠えるの無理ないわ。
とりあえず、ミルクの入った器をもう一つ用意する私。
ナルさんと離れた場所に起き、
タマさんを抱っこで、そこに移動。
これで大丈夫だろ。
暫く静かに各々のミルクを飲む、ナルさんとタマさん。
が!!
ナルさん、自分のミルクがあるにも関わらず、タマさんのミルクを強奪しようとダッシュ!!
「やめいっ!!!」
私はナルさんの手綱を足で踏んで止める。
が、ナルさんは吠えたり、タマさんのお尻を掴んで、なんとかタマさんをミルクの器から引っ剥がそうとする。
なんでだ!!
お前のこっちにあるだろっ?!
「じゃあ、これは要らないんだな?」と言って、ナルさんのミルクが入った器を持ち上げると、
「それはいる!」とばかりに戻ってくる。
しかし、次の瞬間、またもやタマさんのミルクを狙いにいくナルさん。
なんでなんだっ、お前は!!
結局、ナルさんとタマさんの攻防は死ぬまで続いた。
読んで頂きありがとうございましたm(_ _)m
【追記】
タマさん、2022年12月17日永眠。