人面瘡
ある時、クラスメートの後頭部に、傷があるのが見えた。けっこう、大きな傷だ。横にピッて割れている。だけど、誰も騒がない。話題にすらしない。おかしいなとは思ったけれど、別に血も出ていないし関係ないか、と僕もそれを気にしないことにした。
でも、話はそれで終わらなかった。それから数日が過ぎた頃、なんだかその傷に変化が起き始めたんだ。まるで、唇みたいになってきた。そして、その唇みたいになったそれはなんと言葉を喋り始めたのだ。
『助けてくれ、』
『助けてくれ、』
聞き取り難い声だったけれど、それはどうもそう繰り返しているようだった。
『助けてくれ、』
『助けてくれ、』
よく見てみると、それには目玉のようなものも見える。
ふーん、珍しい事もあるもんだ。
僕はそんなくらいに思って放っておいてた。誰にもそれを言ったりはしない。だって、誰も騒がない。きっと、誰にも見えていないのだろう。なら、何かしたってきっと無駄だ。無駄なことはしたくない。
だけど。
それからしばらくが経ったある時、その傷のあるクラスメートは自殺をしてしまったのだ。
――僕は、それでもうそんな事は起こらないだろうと思っていた。
でも、それから数日後に、また声が聞こえてきたんだ。
『助けてくれ、』
『助けてくれ、』
僕は今度は誰に”あれ”が現れたのかと思って、クラスの連中の頭を探した。でも、あれは何処にも現れていないようなのだ。気のせいかもしれない。そう思って、僕はそれを忘れようとした。でも、
『助けてくれ、』
声は確かに聞こえるのだ。それも、とても近い場所から。
そして、ある日の授業中、僕は気が付いた。
声が、僕の後頭部から聞こえているという事に。
ふふ
僕はそれに気付くと少し笑った。
さて。僕はこれからどうなっちゃうのだろう?
そう思うと、何故か可笑しくて仕方なかったんだ。




