第6章 Fの本性
「うわあああああああああ!!」
朝の4時。そんな時間に起きている人は誰もいない。
悲鳴に飛び起きた私・・・Nはドアを開けると部屋を飛び出した。
隣とその隣の部屋からKとRが出てくる。と言うことは今の悲鳴はHのものだろう。
「Hか、今のは。」
「そうだと思う。」
ゲストルームにいるはずのFが出てこないのが気がかりだったが、Hの身に何が起きてるかが心配だったので急いで中央の螺旋階段を駆け下りた。
1階に着いて目にしたものは。
「F・・・。」
地べたに泣きじゃくりながら座り込むHと、壁のキャンバスに打ち付けられたまま頭をたらしている真っ赤なFがそこにはあった。
「落ち着いたか、H。」
「うん、Kありがとう。」
「しかし、Fが殺されるとは・・・。」
3人が話している横でFの遺体の横に落ちていた手帳を拾う。皮の表紙のそれはなんだかとても大切なもののように思えた。が、今は彼女の死んだ原因になるものが欲しい。私たちの情報はあまりにも危険だった。
『作家Hは、空想を現実に書き起こす作家。どんな美しいものも簡単に壊してしまう。』
『作家Kは、おのれの美学を基に作品を作る作家。透明感故に全てを見透かしてしまう。』
『作家Rは、和の心をもって人をもてなす天才。油断は禁物。人の心をもっていない。』
『作家Nは、狂ったように見えて一番の常識人。狂気こそが真実。』
Fの字だろうか。やはり私たちに関することが書かれていた。
私が手帳を読んでいることに気付いたKが険しそうな顔で私に声をかける。
「Fの殺し方、考えたのはNだろう?」
「は?」
突然の問いかけにキョトンとする。だからどうしたというと、バツが悪そうにKは目を逸らした。その姿にHが反論する。
「だって、Fの死体には!」
Hが言わんとすることは分かる。
『Hのキャンバス』に
『Kの銅線とレジン』で貼り付けられ
『Rのペーパーナイフ』で滅多刺しにされ
『Nのネクタイ』で首を絞めつけられた跡があるんだから
それを聞いて確かに私たちを知ってる人たちには犯人は分からないよなあ。と思った。
誰が犯人でもおかしくなかった。
でも私たちは犯人を知っている。
Fの手記を捲る。
『患者No.2356189
「あたしは4人だ。」と言う患者の発言を基に聞き取り、検査を実施。
既に深い思い込みがあるようで、それぞれ3名に自我データを確認。
調査のために『アトリエK』を建設。データ収集を実施。
精神科医であるわたしとの直接認識はなかった為、主治医の代わりにゲストルームに滞在。
『彼女』らの弟子として共同生活をする。』
HとN、Rの作業場の間にある大鏡に視線を移す。
ほかの3人も気づいたようで私と同じように視線を動かした。
「分かってんだろ、主人格。」
そこには何度も見た景色。
デニム作業着、黒のスーツ、和装、ネクタイ姿の『男』4人が映ってるはずのそこには。
「あは♡」
デニムの作業着を着た『女』の姿しかなかった。