俺の物は俺の物、お前は俺の物
俺の名前は、鮫島武。
皆からは『シャーク』と呼ばれて畏怖されている。
草野球チーム『やさぐれジョーズ』の監督兼4番打者、やさぐれヶ丘中学校に通う14歳の男子中学生だ。
「シャブ夫くん! 私のお気に入りパンティ返してよ! 風邪ひいたらどうしてくれるの!」
「やなこったあ〜。シャークくん、のぶ代が追いかけてきたから早いとこ逃げようぜ」
「二人とも待ちなさいよ!」
俺の取巻きの舎部川ヤル夫(シャブ夫)が学校の昼休み、幼馴染ののぶのぶ代の背後から近付いて、足元に引き下ろした彼女の下着を指で回して逃げてきた。シャブ夫は最近、のぶ代をターゲットにした性的な嫌がらせにご執心のようだ。俺は、べつにのぶ代を虐めたいと思わないのだが、小学校からの惰性で、なんとなく彼女をからかってしまう。
「おい、のぶ代!」
「な、なによ、シャークくん?」
「お前も中2なんだし、シャブ夫に下着を取られたら、もっと泣きながら恥らうとかさ……。なんで、スカートの裾を持ち上げながら走って追いかけてんの? 恥ずかしくないの? 見えちゃうよ」
「嫌よ。だってシャークくんたちは、私のナニが見たいんじゃなくて、私が泣きながら懇願する姿が見たいんでしょう。その手には乗らないわ!」
「俺には、そんな倒錯した趣味はないぞ」
「じゃあシャークくんは、女の子から下着を取り上げる趣味があるの?」
「俺は取上げてないじゃん。取上げたのはシャブ夫じゃん」
「じゃあ返してよ!」
俺は、教室の隅で戦利品をジップロックしていたシャブ夫に、のぶ代に返してやるように言った。しかしシャブ夫は『シャークくん、のぶ代のパンツ欲しいの?』と、ジップロックを渡してきた。とんだ勘違い野郎だぜ。鮫島武、そんなガキ臭い真似するわけがない。
まあ、しかし実際に手にしてみると、すぐに返すのが惜しくなる。俺は、とりあえず一日預かることにしてジップロックを鞄にしまって帰宅した。これが不味かった。
「たけし! なんだいッ、なんで鞄に女の子のパンツが入っているんだい!」
「し、知らねえよ、かあちゃんっ、きっとシャブ夫のやつが、俺をはめやかだったんだ」
「たけし、このパンツ、のぶさん家ののぶ代ちゃんの名前が書いてあるじゃないの……、 あんたねえ、いくら好きな女の子のパンツだからって、ジップロックに入れて持ち歩くなんて、母ちゃん、情けなくて涙出てくるわ」
「ご、誤解だよ、かあちゃんっ、俺、べつにのぶ代のこと好きじゃないよっ」
「いいから、さっさと返しておいで。のぶ代ちゃんに返してくるまで、ご飯は抜きだよ」
「わかったよ」
家を追い出された俺は、2軒隣ののぶ代の住んでいる木造アパートに向かった。のぶ代の家には最近、ヤクザみたいな男が居候しており、こんな夜更けに顔出したくない。
「あ、シャークくん?」
「よお」
のぶ代の家の前で悩んでいると、胸元に刃物を抱えた彼女がドアを開けた。
「のぶ代、どうしたんだ? そんな物騒なもの抱えて」
「ここで会ったが百年目、私のパンティ返しやがれ!」
俺は、のぶ代の手首を捻りあげて刃物を取り上げると、代わりにジップロックを手渡した。彼女は一瞬のことで、何が起きたのかわからない様子で、口をあんぐりしている。
「す、すみません、その道具も返してもらえませんか。それ、借り物なんですよ」
のぶ代は、おずおずと切り出した。
「いいぜ、返してやるよ。その代わり……」
「パンティは渡しませんよ」
「いらねえよ、そんなもん」
俺は、のぶ代を抱き寄せると、耳元で囁いた。
「俺の物は俺の物、お前は今日から俺の物だ」
「え、え、な、なんなの、シャークくん……、こんなの卑怯だよ、私がシャークくんのこと昔から大好きなの知ってるくせに……、本当にずるいよ」
「のぶ代、お前は俺の物だ」
のぶ代は急な告白で混乱しており、新しい虐めが始まったと勘違いしているようだった。それでも彼女は、俺の腰にか細い腕を回してきた。シャブ夫には、抜けがけしちまって申し訳ないことをした。
次回『悪いなのぶ代、これ3人乗りなんだわ』
シャークの抜け駆け知ったシャブ夫は、のぶ代を歌舞伎町裏のホテル街に呼び出すと、金で雇ったヤクザ者二人とともに彼女を強引にホテルに連れこもうとする。いそげチャカえもん、ドスミちゃん、シャーク、のぶ代の操を守るんだ!!
たぶん書かない!