第3話 危険!?半竜娘現る! その3
半竜の女の子をなんとか泣かせずに済んだが…一体どうしたものか。もう時間も危うくなってきた。あと2~3分でここを離れないともう間に合わないだろう。
とはいえ、この子をこのままにしておくのはなんだかまずい気がする。とりあえず友人に一報を入れよう。理由は適当でいい。通学途中に腹が痛くなったとかでいいだろう。
俺はスマホを取りだしてメールを送る。―――これである程度の時間はできた。…そして次にやるべきことは
この子がどこからどうやって来たのか知ることだ。
「あの…まずは、名前を教えてくれますか?」
「…エリルです」
エリル…か。名前の響き的には欧米っぽいが、欧米に半竜人がいるわけでもない。
「どこから来たんですか?国の名前とかを言ってもらえれば」
「アレイアというところです」
聞いたことが無い。自慢じゃないが地理が得意で、世界の国名も結構知っている。太平洋の小さな島国とかはパッと出てこないが、アレイアという国が存在しないだろうというのはなんとなく予想できた。
試しにスマホで検索をかけてみたが、やはりそういった国はないようだ。
じゃあエリルさんは嘘をついているのか。…いや、そうじゃないような気がしてきた。もしかしたら、本当にそういう国が“どこか”にあるのかもしれない。
だが、まずは彼女に事実を伝えなくてはならない。
「アレイアという国は少なくともこの世界にはありません」
「えっ…!?そんなことないです!本当にあるんです!」
エリルさんは顔を近づけて強く訴えるように言ってきた。信じてほしいという思いが伝わってくる。
「信じてないわけじゃないです。でも、ないんです。エリルさんはこの地図に見覚えがありますか?これが世界地図です」
俺はそう告げて、スマホの画面に世界地図を小さく縮小したものを映して掲げた。エリルさんは不思議そうに顔を近づける。世界地図というよりも、まずスマホ自体を物珍しそうに見ている。
「不思議な機械ですね…」
「あ、これはスマートフォンっていう携帯できる電話です。…いや、本題はそこじゃなくて、この地図です!これ、見覚えありますか?この地図に載っていないなんてことはありえないんです」
エリルさんは地図を見て、息を呑んだ。
「…見たことないです、こんな形の地図は。私の知ってる地図じゃないです」
「でもこれが世界地図なんです。アレイアという国はどこにも載っていません。だからこの世界には存在しません」
「この世界には…?」
どうやら勘付いたようだ。話を先に進めよう。次に訊くことも重要だ。
「もう1つだけ訊きたいことがあります。どうやってここに来ましたか?」
…すると、エリルさんはある方向を指差した。花滝山だ。この地区の住宅街のそばまで迫る花滝山を指差している。
「気付いたらいつの間にか、あの山の中にある池のそばにいたんです」
どうやら、謎は池にあるようだ。ここは行ってみるしかないだろう。
「その池に行ってみましょう。何かわかるかもしれません」
俺はそう告げて、エリルさんと花滝山の中腹に位置する池へと向かうことにした。……と、その前に
「エリルさん、その角と尻尾って隠せますか?」
「…なんとか頑張ってみます」
エリルさんは少し自信無さげにそう答えると、長い尻尾をくるくると巻いていき、何とかスカートの中へとしまおうとする。2本の角は周りの髪を使ってうまく隠そうとする。…髪型がおかしくなってしまうが仕方ない。
「できました!」
うまく隠せたエリルさんは嬉しそうに笑顔を向ける。……と、気を抜いた途端
ヒュン…!
せっかく巻いていた尻尾がスカートからはみ出てしまい、エリルさんはシュンとなってしまったのだった。