第2話 危険!?半竜娘現る! その2
「ごめんなさい!」
女の子は申し訳なさそうに深々と頭を下げて謝る。意外とすんなり謝ってくれた。……まぁ、こっちが無断で触ってしまったのも悪いし。
「こっちこそ、勝手に尻尾触っちゃってごめんなさい」
多少なりとも俺にも非があるのでこっちも謝り返す。…けど、冷静に考えるとおかしい。作り物なら触られた感覚なんて微妙に感じるくらいだろうし、嫌がるほどでもないはずだ。
さっきの嫌がり方は、例えば猫や犬が触られたくもない奴に尻尾を触られて嫌がるのと似ていた。
「えっと…その…さっき、コスプレじゃないって言ってましたよね…?それって…つまりどういうことですかね…?」
考えていても埒が明かないので、ここは訊いてみるしかない。なんて答えるのだろう…?なんだかドキドキしてきた…。
「私…ドラゴンハーフなんです…」
…………。
「え…?」
目が点になってしまった。ドラゴンハーフってなんぞや?直訳すると…半竜?
「半竜ってことですか?」
「はい。父がドラゴンで、母が人間で…それで半竜の私が生まれたんです…」
へぇー…、そんなことがあるんだー…。へぇー………?
「あの…、ちょっと待ってください。そもそもドラゴンってのはね、架空の生き物なんですよ」
やっぱりここまで付き合ったのがバカだったのかもしれない。ドラゴンなんてのはこの世に存在しない。あるのはシードラゴンとかドラゴンフライとかドラゴンフルーツとかだ。最後に至っては果物だ。
それでしかも人間との混合種だと言うのだ。いやいや茶番だ。やっぱり弄ばれていた。この角と尻尾は相当精巧に作られたものなんだ。
なんていうか、そこまでして通学途中の高校生を騙したいのか?まったくもって意味がわからん。いやいや本当に時間を無駄にした。そろそろ向かわないと本当に遅刻してしまう。
「もうこれ以上付き合えません。じゃ、学校行くんで」
俺は立ち上がると、冷たく言い放って背を向けた。もうあとは好きにしろと言いたい。そのうち警察が捜しに来るだろう。おふざけも時間の問題だ。
「本当なんです…!信じてください…!」
聞こえてきたのは女の子の泣きそうな声だった。俺は反射的に立ち止まって振り返ってしまった。
…すると、今にも涙を零しそうな顔を浮かべていた。そして訪れるものすごい罪悪感…。このまま泣かせたら心が削れそう…。阻止しなくては。
「泣かないでください!すみません!俺が悪かったです!だから泣かないで下さい!」
「では…信じてくれるんですか…?」
「いや…それはちょっと…」
そこは素直にハイと言えなかった。
すると、女の子はブワッと目から水滴を溢れさせたのだ。決壊寸前だ!
「信じます!!はい!信じます!!」
こうして、本望ではないが、目の前の女の子が半竜であることを信用することにしたのだった。