第18話 緊迫!クイズ対決の行方は!? その2
最終問題はまさかの北を指差せという問題だった…。いろいろ突っ込みどころ満載だが、なにより…
エリルとの相性最悪の問題だ…。
「えっと…えーっと…」
エリルが目を点にしてオドオドしてる…。端から見ればかわいいが、いや…そんな場合じゃない。
「おや?おやおや?難問だったかな?」
木は表情こそ見せられないものの、口調からにやついているのがわかる。こいつ…まさかエリルが方向音痴だって知ってるのか?だとしたら相当意地汚い奴だ。
「北…北…えっと…どっち…」
エリルは指をあれこれ動かしながら悩みに悩みまくっている…。まずいなこれは…。ここで間違えたら木はずっとここを退かないかも知れない。川の水を戻すためにも正解させなくては…。
ヒュ~~~ドサッ…
その時、めちゃくちゃ不自然に空から何かが落ちてきた。……これは!俺のスクールバッグ!ずっと忘れてたけど、こっちの世界に来たときに無くしてたんだった。
っていうか…これ、あの神様のしわざだよな…。なんでこのタイミング…?
………そうだ!いいことを思いついたぞ!
「ごめん、ちょっとトイレしてくる」
俺は軽く手を挙げてそう告げると、スクールバッグを持ってそそくさと森の茂みに向かう。ちらっとミストの方を見たら、なんでこのタイミングで行くんだクソが。って顔してたな…。
だが、エリルを正解に導くためなら仕方ない。どんな汚れ仕事だってやってやる。
俺は茂みの中に入ると、スクールバッグからボールペンとノートとのりを取り出す。ノートの紙を小さくちぎってそこに矢印を書く。そしてそれにのり付けしてあるところに貼れば準備万端。よし行くぞ。
「ふぅ~~」
これもまた演技だが、気持ち良さそうに2人の前に戻る。…ミストの顔は見ないようにしよう。…そして、エリルと木の間くらいの位置に行くと――
ツルッ
「おわっ!」
うまく足がエリルの方に向くように転んでみせた。
「ユウキ!?大丈夫ですか…!?……!!」
「いたた…」
俺は痛がりつつもエリルの顔をチラッと見る。……気付いた顔だ。
「ユウキ!ほら、手を貸しますよ」
エリルがスッと手を差し出す。俺は言葉に甘えてエリルの手を掴んで立ち上がった。ほんのりあったかくて柔らかい手だ。
「ほーらぁ!!そこのイチャイチャタイム終わり!早く答えて!」
痺れを切らした木が強めの口調で忠告する。いいぜ。答えてやれ。
「わかりました。それじゃ答えます。北は……こっちです!」
エリルは凛とした目付きでビシッと北の方角を指差した。決まってる!カメラで撮ってあげたいくらい。
「な、な、なななんと…!正解だ…。なんで!?どーしてぇぇ!?」
木はエリルが正解したのが信じられないようで、悲鳴に近い声を上げている。ざまぁーみろ。
「ほら、約束だ。そこを退いて川の水を戻せよ」
俺は木の前に立って退くように告げる。この時は素直に退くもんだと思っていた……が
「うるせぇぇぇ!!退くかばぁぁか!!」
途端、木がいきなり暴言を吐いて、根っこを振り上げて、尖っている先端を俺の頭に向けたのだ。……え?結局武力行使かよ!?っていうか俺死ぬの?
「串刺しにしてやるわぁぁ!!」
「ユウキ!!」
やばい…。エリルのブレスも間に合わない…。さよなら…。
バシャァァァ!!
――その時、木の背後に溜まっていた水たまりから水が勢いよく筋状に飛び出し、根っこに巻き付いて縛り付けたのだ。間一髪…。
そこに、水を操って助けてくれた張本人、ミストが近づいてきて木を睨み付けた。
「往生際が悪い。でもこれで、私が魔法を使っても文句は言えないよね」
ミストはそう告げて右手を差し出した。
バシャァァ!!
すると、筋状の水流がさらに1本出現し、木の幹に巻き付いた。そして、幹を強い力で縛り付ける。…仮に俺がやられたら即死だろうな。
「うぎぎぎ…!痛い痛い!放してぇぇ~~!!」
「わかった。はなしてあげるから、川の水をせき止めた理由を話して」
「話す話す!!暗黒水を作ってたんだ!森の動物どもを魔物化するために!でも、これはあるやつに言われて…!」
「…なるほど。理由はわかった。じゃあ」
バキッ!!
見事に折れました…。ええ真っ二つに。折れた幹の上側がゆっくりと倒れていく。
「放すって言ったじゃ…ん……」
「はなすって解放する方じゃないから」
「そんな……騙すなんて……ひど……」
遺言もむなしく、木は舞い上がる砂のようにサラサラと消えてしまった。
木が消えたことでせき止められていた水が下流へと流れ出す。おっとっと、ここにいたんじゃずぶ濡れになっちゃう。
「とりあえず川から離れよう」
「その必要はない」
ミストが俺の言葉に被せるようにそう告げると、右手を迫ってくる水に向けた。
パキパキパキ…
なんと、今度は水が瞬時に凍り付いて、氷のいかだができあがったのだ。…すげぇ。水を操るだけじゃなく、凍らせることもできるのかよ…。マジこの子万能じゃないか。
「これに乗って町に戻る」
ミストに言われるがまま、俺とエリルは氷のいかだに乗った。氷は水より軽いから浮力で浮き上がる。3人が乗っても沈むことは無い。氷のいかだは流れ出した水の流れに従って下流へと向かいだした。
「ひんやりしてて気持ちいいですね~」
「そうだな。ありがとうミスト。きみのおかげだよ」
今回の件、ミストの大活躍と言っていい。だから素直に彼女に感謝したいと思った。
「あなたもまさか靴の裏にヒントを書いた紙を貼り付けて、木に見えないように転んでエリルに見せるなんて」
「それは褒めてるの?貶してるの?」
あんまり褒められるような行為じゃなかったからわざわざこのタイミングで言わなくても…。小汚いことしやがってって貶しているようにしか思えない…。
「さぁ」
ミストはぼかした回答をして再び前を向く。…何はともあれ、無事に川の水が戻ってよかった。気になることはあるけれど、とりあえず町に戻ってからだ。




