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亜人至上主義の魔物使い  作者: 栗原愁
第5章 エルヴバルム編
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エルフの魔物使い

「くっ……くそ! やられた!」


紫音の魔法によって吹き飛ばされたアイザックは、まったく反応できずにいたことに悔いていた。

その上、侵入者たちを自分の仲間たちの元へ行かせてしまうという失態も犯してしまった。


「せめて姫様だけでも!」


今は紫音の後ろにいるメルティナを救うことを第一に考え、アイザックは剣を構え直す。


「フィリアたちは無事、行ったようだな。あとはあいつを捕縛するだけだ」


「あ、あの……シオンさん、アイザックさんにあまりひどいことしないようにしてください」


紫音の服の裾を控えめに掴み、上目遣いで注意していた。


「そういえばお前、あいつのこと知っているようだけど誰なんだ?」


「アイザックは私の護衛騎士です。幼少のころから私のことを守ってきてくれた幼なじみなんです」


「そういうことか。俺だってこんなところで事を荒立てる気はないから安心しろ」


メルティナからの強い要望もあり、あまり傷付けることなく捕縛することに決めた紫音は、改めて相手の状況を確認する。


アイザックは、こちらの出方を窺っているのか、剣を構えたまま動かないまま。そちらから来ないならこっちから行くまで。


(ストーン・エッジ――10連)


周囲に人間の顔ほどの大きさの鋭利な岩を出現させる。

そしてそのうちの一つを弾丸のような速さでアイザックに向けて放つ。


「この程度の速さ!」


向かってくる岩に慌てることなく冷静に対処する。

構えた剣を横薙ぎに振り払い、岩を一刀両断する。真っ二つに割れた岩は、アイザックに当たることなくそのまま後方へと飛んでいった。


「小手調べのつもりか? あまり舐めていると――っ!? なっ! い、いない!?」


一瞬、放たれた岩の方に意識を集中してしまい、気付けば先ほどまでそこにいたはずの紫音の姿が忽然と消えていた。


(ど、どこだ! ――っ!?)


そのとき、左方向にある木からダンッ、という強い音が聞こえる。

即座に音のする方向に顔を向けると、


(なっ!? い、いつのまに……)


そこには剣を振りかざした紫音の姿が。

先ほどまで遠くにいたはずなのになぜこんなところに。驚異的な光景にアイザックは混乱していた。


「ハアアアアアアッ!」


混乱して隙ができていたアイザックを紫音は見逃さなかった。

ガラ空きの上半身目掛けて構えた剣を振り下ろす。


「グワァッ!」


防御を取ることができず、直撃を喰らってしまう。

倒れたアイザックは、再び態勢を整えるため立ち上がる。その顔には、怒りの感情が表に溢れ出ていた。


「舐めやがって……オイ! オマエ!」


「……?」


「なぜ剣身で斬りかからい! ふざけているのか」


アイザックの言う通り先ほどの紫音の攻撃は剣の切っ先部分ではなく、殺傷性が低い剣の腹の部分で斬るというよりも叩くといったほうが近い攻撃をしていた。


「お前はどうか知らないがこっちは殺すつもりなんかまるでないから当然の攻撃をしたまでだ」


「なん……だと……」


今の発言でアイザックの怒りはさらに増してしまったようだ。

紫音にそのつもりはないが、アイザックの耳には相手を舐めた発言だと捉えてしまったらしい。


「舐めるなよ侵入者が! 貴様を倒して姫様を取り戻す!」


「だから俺の話を聞けって言ってるだろ……」


胸中でずっとそう思っていたせいか、思わず口にも出してしまった。


(向こうは大丈夫だろうな……)


アイザックの仲間たちのところに行ったフィリアたちの心配をしながら紫音は、再び戦闘が続行した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



その頃、リースとレインはエルフ側の一人と対峙していた。


「ようやく見つけた……」


「……悪いけど大人しく捕まってくれよ」


二人はすぐに戦闘の構えを取り、万全な戦闘態勢を整えていた。


「先ほどの魔法攻撃には少々驚きましたが、大人しくあなた方に捕まるほど私、弱くありませんよ」


リースとレインが対峙していた女性のエルフは口元に手を当てながらそう言っていた。


長い髪に頭部には花冠のような髪飾りを乗せている女性。

武器らしいものは何も持っておらず、どのような攻撃を仕掛けてくるのかまったく分からなかった。


リースとレインは落ち着いて相手を観察しながら出方を窺っていた。


「あれほど捕まえるとか言っていたのに様子見ですか。……ならばこちらから行かせていただきます!」


リースとレインに人差し指を向け、くいっと指を上にやると、女性の足元からボコボコっと地面が盛り上がる。

それはどんどんとリースとレインの方へ向かっていき、


「レイン!」


「姉ちゃん!」


お互いにアイコンタクトをした後、二人は力強く地面を蹴り、横に跳んだ。


その刹那、盛り上がった地面から触手状の(つる)が地面から飛び出してきていた。蔓は、まるで鞭のようにしならせながら先ほどまで二人がいた場所を叩き落とす。


大きな音を立てながら蔓が叩き落した場所を見ると、そこにはくっきりと大きくへこんだ地面があった。

少し判断が遅ければ自分たちもあれの餌食になっていたと思うと、少し血の気が引くような思いになった。


「ね、姉ちゃん、なんだろうあれ?」


「わたしも知らないけど……そもそもあれ魔法なの? 植物のつるみたいなのが出てきたけど」


正体がわからぬ攻撃にリースとレインはどう出ればいいか判断できずにいた。


「勘が鋭いわね。……もう一度行ける?」


彼女が後ろに向かってそう問いかけると、土砂を上空にまき散らしながら地面の下からなにかが飛び出してきた。


「なっ!?」


「あ、あれは……」


リースとレインの目に巨大な植物の姿が映っていた。

その植物はまるで生き物のように身体を動かしており、女性を守るような位置に立っていた。

巨大なつぼみがリースとレインの方を向いており、まるでこちらに顔でも向けているようにも見える。


「驚いているようね。この子は私の使い魔、『マンイータ・プラント』という食人植物の魔物よ」


フフフと小さく笑い声を出しながら自分の使い魔について紹介していた。


「あの人……テイマーだったのか」


「お兄ちゃんと同じ……」


紫音と同じ職業の人と初めて会ったリースとレインは驚きを隠せずにいた。


(どうやら驚いているようね。『魔物使い』は外の世界では珍しいからしょうがないけどその油断が命取りよ)


魔物使いは意識が別の方に逸れていることをいいことに攻撃を仕掛けようと食人植物に命令を下そうとする。


「よし……やりなさ――」


「オイ!」


(――っ!? 感づかれたか?)


攻撃を仕掛けようとしたことを気付かれたと思ってしまい、思わず身構えてしまう。


「どうせやるならホンキで来い! 一体なんてそんなボクたちをなめたマネしないで十体でも百体でも出して来いよ!」


「そうよ! 全部わたしたちが相手するわ!」


「……え? あ、あの……」


リースとレインのその発言に魔物使いは困惑状態に陥っていた。


「あ、あなたたち……いったいなにを言っているのかしら」


魔物使いは頭を抑えながら話を続けた。


「十体や百体なんて魔物使いが出せるわけがないでしょう! 私の使い魔はこれ一体よ!」


横にいる食人植物を指差しながら声を上げる。

しかし、リースとレインはまるで信じられないとでも言いたそうな顔をしていた。そしてリースとレインは、顔を寄せながらこそこそ話をし始める。


「え? ウソ、そんなことって……」


「でも兄貴は何百体も従えていたよな。……もしかしてボクたちを油断させるためのハッタリかな?」


「あれ? でもたしか前にお兄ちゃん、自分は特別だから他のテイマーと出会ってもお兄ちゃんと同じだと思わないようにって言っていなかったっけ?」


「え!? あれってホントだったんだ。てっきりテイマーってみんな兄貴みたいにできると思っていたのに……」


「でも一体だけならわたしたちでも倒せそうね」


「ああ、たしかに……」


勝利を確信した二人はお互いに頷いた後、こそこそ話をやめ、魔物使いの方に顔を向ける。


「どうやら作戦会議は終わったようね」


「わざわざ待っていてくれてありがとうございます。あなたがお兄ちゃんと同じことができないならわたしたちでも勝つことができそうです」


「兄貴ほどじゃないなら負ける気がしねえ」


(なんなのこの子たち? この子のお兄さんっていったいどんな魔物使いなのよ)


凶悪な魔物を従えている魔物使いを前にしても物怖じせずむしろ勝つ気でいる二人。

魔物使いは予想外の展開に頭を悩ませていた。


(と、とにかく今はこの二人を倒して一刻も早くアイザック隊長のもとへ行かなくては)


一度考えることをやめ、リースとレインを倒すことに決めた魔物使いは、再び攻撃命令を下す。


「――ッ!」


食人植物の魔物は地面から触手状の蔓が複数、地面を這いながらリースとレイン目掛けて向かっていた。


「来るわよ! レイン準備はいいわね」


「おう! 来るなら来い!」


二人は武術の構えのような姿勢を取り、向かってくる蔓に真っ向で勝負しようとしていた。


「ターゲットはテイマーただ一人!」


「ジンガ師匠直伝の『王狼流(おうろうりゅう)武術』見せてやるぜ!」


獣人族の武術がエルヴバルムの森で火を吹く。


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