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亜人至上主義の魔物使い  作者: 栗原愁
第5章 エルヴバルム編
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旅の中の新たな発見

今回から新章突入!

いつもより少し短めです

「うーん、疲れたわね」


両手を天高く伸ばしながら大きく背伸びする。この長旅でフィリアは飛び続けていた体を労わっている。


「お疲れ様フィリア。今日のところはここで野営をするか。後は俺たちに任せてフィリアはいつものように待っていてくれ」


「了解。……でもその前に、紫音お茶をいただけるかしら?」


「お前、またそれかよ……」


休みが入るたびにフィリアから口癖のように出てくる言葉に正直紫音はあきあきしていた。


アルカディアを旅立ってから早くも三日。さすがは竜人族といったところか、竜化したフィリアのおかげで目的地のエルヴバルムまであと少し。

明日か、明後日になれば目的地に到着するほどの場所に紫音たちはいた。


「いいか、俺たちは忙しいんだ。これから俺とレインは食料の調達。ティナとリースは野営の準備。ディアナにいたっては魔物除けの結界を張ってもらっているんだ。全員やることがあるんだからみんなのジャマをするな」


「ジャマってなによ。私は、ここまでみんなを運んだ功労者なんだからもっと私を労わりなさいよ。ほら、早く出しなさいよお茶――っ!? イッタイわよ、紫音!」


「軽く小突いただけだろ。お茶は後で淹れてやるから今は水で我慢しろ!」


軽めの拳骨をフィリアに与えた紫音は水の入った水筒を投げて渡した。若干不機嫌な顔を浮かべながらもレインとともに狩りへと出かけた。


「行くぞ、レイン!」


「は、はい、兄貴!」


それを近くで見ていたメルティナは、ともに野営の準備をしていたリースに恐る恐る話しかける。


「あ、あの……前から気になっていたのですが、シオンさんってどうしてフィリアさんにあんな態度がとれるのでしょうか?」


「あんな態度ってどれのことですか?」


「……なんと言いますか全部ですよ。フィリアさんって王様ですよね。それなのに言葉遣いだけでなく、物怖じしていないと言いますか……」


今回の件に限らず、メルティナはアルカディアに滞在していた頃からそう思っていた。


紫音がただの人間ではないとメルティナは踏んでいたが、それでも竜人族のフィリアに対してあの態度。

圧倒的な力量差があるか、もしくはよほどの馬鹿でないと説明がつかなかった。


「ああ、あれですか。たぶん、フィリア様の仕事をお兄ちゃんが肩代わりしているせいじゃないですか?」


「仕事をですか?」


「本来フィリア様がやるべきメンドくさいっていう理由でいつも仕事をサボっているせいでお兄ちゃんにそのしわ寄せが来ているんですよ。それでお兄ちゃんも強気でいられるんじゃないでしょうか」


メルティナにそう告げたリースは「でも」と付け加えながら続ける。


「別にお兄ちゃんはフィリア様のこときらってはないと思いますよ。むしろ大事に思っているくらいです」


「さっきの場面で一度もその片鱗が見えなかったのですが……」


「そんなことないですよ。だってお茶の代わりに水をあげていたじゃないですか」


「あ、あれがですか……」


「それに、フィリア様も同じ気持ちだと思いますよ。怒られるのが分かっていてお兄ちゃんにいつも言っているんですよ。あれは絶対にかまってほしいんだと思います」


「そ、そうなのですか……」


自信満々に言ってのけるリースの迫力にメルティナはその迫力に負けてしまった。


しかし、メルティナは今の話を聞いてますます紫音たちのことが分からなくなった。

とりあえずメンドくさい関係だということだけは理解した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「このお肉美味しいですね。生臭くないですし」


「なかなかじゃな」


「だろ。家から調味料持ってきてよかったよ。普通に焼いたんじゃそれほどうまくないからな」


「私は別に生のままでもよかったんだけどね……」


「肉は調理した方が絶対にうまいだろ」


などと談笑しつつ紫音たちは焚火を囲みながら夕飯を食べていた。


紫音たちが仕留めてきた魔獣を調理し、みな絶賛していたが、フィリアだけは文句を言っている。

紫音はフィリアの文句を軽く流していると、隣にいたレインが小さくため息をついていた。


「どうしたレイン? マズかった」


「そ、そんなことないですよ。……ただ、さっき逃がした魔獣のことを考えていて」


「兄さん、どうかしたんですか?」


「大型の魔獣を取り逃がしただけだよ。レインもかなり深手を負わせていたんだが、あと一歩のところで魔獣に逃げられて落ち込んでいるだけだよ」


紫音も途中からしか見ていなかったが、戦力的にレインの方に分があった。しかし、魔獣のほうも敵わないと思ったのかレインに意表をつかせながら戦線離脱していった。


「あんなに大きかったらもっと腹いっぱい食べれたんですけどね……」


「いや、いらないだろ。これで十分だよ。それよりもレインはもっと誇っていいんだぞ」


「え? なにをですか?」


気付いていない様子のレインに紫音はあることを告げる。


「お前が瀕死の重傷を負わせたあの魔獣、どっかで見たことがあると思ったんだが、さっき思い出したよ。あれ、ギルドで討伐依頼が出ていたサーベルライガーっていう魔獣だったな。それもCランク以上の冒険者が条件の依頼な」


「レイン、すごいですね。それってレインもCランクぐらいの実力があるってことじゃないですか」


「そういうことだ。レインもそれくらいの実力がついているんだからそう悲観することもないぞ」


紫音から褒められたせいか、さっきまで俯いていたレインの顔に光が灯されたように笑みが浮かんでいた。


「あ、あの……私はギルドやランクのことを知らないのですが、Cランクというのはそんなにもすごいのでしょうか?」


「一般的にCランクまで階級を上げれば冒険者としては一人前と呼ばれるレベルになるな」


「あんなんで一人前になれるんだ。アルカディアにいる魔獣たちに比べたらそれほど強くないのにな」


「……え?」


レインの口から信じられない言葉が飛び出てきてメルティナはしばらくの間固まっていた。


「まあ、アルカディアに出現する魔物たちは強いマナの影響でそこら辺にいる魔物たちより強さだけでなく凶暴性も増しているからな。比べる方が間違っているよ」


「たしかにそうか。さっきのサーベルライガーだっけ。前ならビビっていたかもしれないけど今は別に怖くもないかな。毎日のようにアルカディアの魔物たちを相手していたから知らないうちに強くなっていたんだな」


まるで笑い話のように話しているが、メルティナはそれどころではなかった。


「あ、あの……もしかしてアルカディアにいる国民全員、あの魔物たちと戦ったことがあるんでしょうか?」


唐突なメルティナの質問に対して紫音が答える。


「戦える奴は経験あるな。まあ、戦ったことがあるって言っても安全を考えて俺と契約した魔物たちとだけどね。みんなの自衛のために訓練させてきたけどみんなずいぶんと強くなったよな」


「そうじゃな。元は魔境の森に生息していた魔物たちが紫音と契約してさらに強化された魔物たちじゃ。あれといい勝負ができれば森にいる魔物たちにも負けはせんじゃろ」


その会話を聞いたメルティナは言葉が出なかった。

メルティナも迷子の一件で森の魔物たちと遭遇したが、どれも敵うような相手ではなかった。


そんな魔物たちと同等の力をもっている亜人たちがアルカディアにいることにメルティナは驚きを隠せなかった。

紫音とフィリアたちの実力は知っていたが、国民たちの力まで知らなかったためしかたがなかった。


(こ、これ……私たちエルフ族の手を借りるよりどこか小さな国々に対して武力をもって制すれば簡単に国を大きくすることができると思うのですが……)


アルカディア全体の戦力を考えたメルティナは、思わず戦闘狂みたいな考えが頭をよぎってしまった。


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