相馬眼(チート)
注意!
作者は競馬にわか勢です。
ウイニングポストから入ったため、馬名流用するかもしれません。
血統は少ししかわかりません。配合理論?なにそれおいしいの?状態です。
レース結果は、ネットで調べています。
2000年
北海道のとある病院で、普通の夫婦から、一人の子供が産まれた。
体重も一般的。元気な産声を上げて産まれたその男の子が、将来、競馬界の有名人になる事を今は誰も知らない。
2005年
「あの馬……」
「ん?どうかしたか?」
桜が散った、4月の半ば。中山競馬場にある親子の姿があった。
すくすくと育った男の子は、父親が馬産業に関わっていることもあってか、馬に触れることが多い。幼い頃の経験は大きな物で、男の子に「馬を見る目」すなわち相馬眼が養われたのも自然な流れだった。
そして今は、皐月賞のパドックの最中である。
「あの馬、強い」
「ええと……ディープインパクトか。そうだな、確かに強いよ、あの馬は」
「ん」
父親の同意を得られた男の子は、満足そうにしている。まだまだ父親が好きでいられる年齢だ。
「どうしてそう思ったんだ?」
「……勘?」
「……ふふっ。そうか、勘か」
男の子は静かに頷いた。
2005年、第65回皐月賞。少しスタートがよれたディープインパクト。しかし、その程度の不利はなんのそのと言わんばかりに、4コーナーをカーブして直線に差し掛かったときには既に先頭。他馬を一切寄せ付けず、勝利を収めた。
……その陰では僅か5歳ながら前情報一切なしで勝ち馬を予想したその男の子の優れた相馬眼が父親に知られる。しかし、ディープインパクトが勝つことは誰もが予想できたこと。
ここからが、その男の子、黒宮奏真の本領発揮だった。
奏真の父親は、たまに重賞のパドックを奏真に見せるようになった。
毎度のように競馬場に行くわけにもいかないので、ネット配信されているパドックを見せると、奏真は勝ち馬を予想する。
皐月賞の勝ち馬予想で褒められたことで味をしめているのか、自分から予想したいと言いだしかねないほどに、競馬にハマっていた。
天皇賞春、スズカマンボ
京都新聞杯、インティライミ
オークス、シーザリオ
日本ダービー、ディープインパクト
宝塚記念、スイープトウショウ
札幌記念、ヘヴンリーロマンス
秋華賞、エアメサイア
菊花賞、ディープインパクト
ジャパンC、アルカセット
有馬記念、ハーツクライ
全て的中(単勝)。そのうち、三連単的中は、天皇賞春、日本ダービー、菊花賞、ジャパンC、有馬記念。
と、凄まじい的中率を叩き出した。
(なお父親は、元手1万で5000万稼いだ模様。それでいいのか、親)
流石に悪いと思ったのか、父親はこの後予想を頼むことはしなくなった。
奏真はその後も予想を続け、2010年には全ての重賞において単勝を完全的中、2012年には三連単を完全的中させるという非現実的な事を成し遂げ、達成感に満ち溢れながら、レース予想を控えるようになった。
中学生になってからは、父親の勧めで幼駒もみることになり、牧場(父親の勤務先)の走りそうな馬を予想していた。
「こいつとかどう思う?俺は結構走りそうだと思うんだが」
奏真は静かに首を横に振った。父親は崩れ落ちた。これで首を横に振られること10回中10回である。どうやら、相馬眼は遺伝しないようだ。
「くっ……この際幼駒でなくてもいい!俺のお気に入りを見せてやる!」
「いや、幼駒みる約束だったじゃん」
そして連れられたのは牝馬の前。ただし……
「こいつはどうだ!現役時代はG1勝ちこそないが、重賞2勝の名牝だぞ!?」
繁殖牝馬である。
「なんでそんな興奮してんの……まあいいや」
そして、奏真は‘観る’。
「…………」
「ど、どうだ?」
「……こいつが、重賞2勝?」
「何か変なのか?」
「それだけしか獲れなかったのか?」
「言い方にトゲがある気がするが、そうだ。間違いない」
その言葉を聞くと、奏真は瞠目した。
「何年生まれで、何歳で引退した?」
「2004年生まれで、3歳で引退だな。それがどうかしたのか?」
「2004年……ウォッカか。距離も、そうか」
奏真は納得したように頷いた。
「なあ、本当にどうしたんだ?変だぞ、相馬眼はいつも変態級だけど」
「シャラップ。そんなこと言うともう観ないぞ」
「すいませんまじ勘弁してください」
この牧場の経営者……即ち、父親の雇い主は馬主もやっていて、セリで売れなかった馬や気に入った馬を所有している。
しかし、かなりギリギリの状態でやっており、数十頭所有しているうち、走る馬は二、三頭のみだ。
……まあ、全部奏真が見繕った馬だが。
「……でもまあ、こいつはすごいよ。G1勝ててないのが不思議なくらい」
「お前にそこまで言わせるほどだったのか。コイツは」
「こいつの名前は?」
「そうか、まだ言ってなかったな。こいつの名前はーー『オスマンサス』。柊の学術名だな」
「……いい名前だな」
「おい、今の間は何だ。微妙だとか思っただろ絶対」
「ソンナコトナイゾ」
「棒読みじゃねーか!」
奏真はまたもや鼻で笑った。流石にこれには、父親もイラついた。
しかし、馬の手前、怒れない父親だった。完全に手玉に取られている。それでいいのか。
そんなやりとりを、不思議な表情でオスマンサスは見ていた。