魔王はメイドと深夜のお茶会をする2
真っ白い壁紙、大きな窓。木漏れ日が差す部屋。木々が風で揺れると、針葉樹からは葉が落ちる。小鳥が枝に止まりこっちを外から見ている。
僕はなぜかその部屋から出れない。
たまに来る女の子が、部屋のドアを開けて入ってくることから部屋には鍵がかかってないことが分かる。
女の子は、僕に外にあるたくさんの物をプレゼントしてくれる。最初に貰ったものは分厚い「本」だ。僕はあまり興味がない本だったけれど、長い時間一人で部屋で過ごすのに暇潰しに読んだ。
数日後、彼女はまたやって来て僕に自分の一番大切にしている「ぬいぐるみ」をくれた。
一番大切なら自分で持ってればいいのにと、僕はそれを受け取り、棚に置いた。
再び、彼女はまたやって来て、今度は僕に「制服」と「靴」をくれたんだ。僕は制服をハンガーにかけると壁に吊るした。
新しい服をくれたということは、もうすぐ自分がここから出れるという証拠だった。僕は部屋の中で新しい靴の履き心地を試して、いまかいまかと待っていた。
「迎えに来るからね」
そういって女の子は最後に花束を持ってきてくれた。でも、いつになっても迎えに来てくれないんだ。
「結局、魔王様はどこに捕らわれていたのですか?」
「それが思い出せないんだ。ただ覚えているのはーー……。
僕が今覚えている鮮明な記憶は、常にその真っ白な空間には、大切な子がいたこと」
眠くなってきたナーガは目を擦る。エプロンとカチューシャを外して、目を閉じた彼女を自分のベッドへ運ぶと、あたたかい布団を被せ、頭を撫でた。
「おやすみ、ナーガ。
……そして、僕の大切な子」




