魔王と真実を証すもの
「魔王様が現れたそうだ」
「でも、様子がおかしい」
「魔王様は今までの方とは違い人の姿をしている」
「でも、瞳は黒いのだろう?」
「ああ、光の入り具合に寄っては若干山梔色にも見えるが、確かに闇色の瞳をしている」
魔獣たちは魔王が部屋に戻られた後、広間に集まり、魔王様の噂話をしていた。
「……彼が本当に魔王なのか、確かめてはどうだ?」
群がる魔獣たちの後ろから、フードを深く被り顔を隠した者が徐々に近づいてくる。
「でも、もし、本当に魔王様だったら……」
男は自分の胸元から何かを取り出すと、近くのテーブルに置いてあった篭の中から赤く熟した林檎を手に取る。
林檎をテーブルの上にコロンと転がすと、手に持っていたサバイバルナイフで、真上から串刺しにする。
重く鈍い音が部屋に響く。
林檎を串刺しにしたナイフはテーブルを貫通する。
軽く常に胸に閉まって置けるくらいの手軽な大きさだが、刃先を保護する皮から取り出した刃物の部分は、普段固い木の枝や根っこ、蔓を切っているのだろう。ギザギザに尖っており、間違って腕でもすれたなら肉をも引き裂かれそうだった。
林檎は真っ二つに割れ、テーブルからナイフを抜くと、男は割れた林檎を満足げに眺めていた。