魔王はメイドに誘惑される
魔王はベットから起き上がり、誰かを探していた。
「魔王様? 起きましたの? でも、まだ寝てませんと……」
ナーガは魔王の腕を引っ張りベットへ寝かせようとする。
「ねぇ、ナーガ?」
「え……?」
ナーガは自分の手を取られ、ベットに押し倒された。上から魔王が彼女の腕を押さえ、柔らかな髪をなでる。
「どうして私の名前……知ってますの?」
「ああ……野獣が君のことを、そう呼んでいたからね」
ナーガは妙に納得してしまうが、彼女はまだ魔王の本当の名前を知らない。
「魔王様の名前を、私に教えて下さいませんか?」
魔王はにっこりと笑うとナーガの耳に囁いた。
「柳瀬縁だよ」
名前はナーガにだけ教えたかったのだろう。そう囁くと人差し指を口にあて、秘密の合図をする。
「さて、お遊びはここまでにして……」
魔王は体制を立て直すと椅子に腰を掛け、窓から外を見渡した。
「敵が来る前に準備をしとこうか……」
ナーガはその言葉にはっとする。
「この世界にいる勇敢な勇者は魔王の血で世界を救おうとし、一人の勇者を倒したら、また次の者が何度も僕の命を狙いに来るんでしょ? だったら、魔王塔を守る作戦を立てなきゃ」
新しい魔王はスラリと長い足を組むと、頭の中で作戦を立てていた。窓の隙間から風が吹いて、長い髪が広がる。
「ナーガ、何があっても僕が守るからーー……」