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鬼気迫る悪魔の足音


 ……どれくらい時間が経ったのだろう。


 魔王は樹木が何者かによって、押し倒させる音で目が覚めた。

 迫り来る不信な影は樹木を蹴散らした後、目的の物がそこにはないと確信したのか大きな翼を広げ大空を舞う。

 鼻先で臭いをかぎ分け、魔王のかけた霧の力の前で巨大な体はピタリと止まる。


 暴れ狂う巨大なドラゴンを操っていたのは白銀の勇者だ。

 勇者は全身を固い甲冑で覆っている。

 ドラゴンを操るロープの反対の手には、騎乗しながらも敵を倒せる遠距離用の武器を持っていた。鎌の先端には触れたら体を骨ごと持っていかれそうな刃がついている。


 勇者は霧の中に少しずつ腕を入れる。清浄(しょうじょう)された体から溢れ出る力は、少しずつ黒い霧を浄化し、見定めた後大きく鎌を振るうと中から塔が現れ、道が開いたー…。


「ここか」


 直ぐ様、勇者は塔の最上階にドラゴンを寄せる。

 何トンもあろうドラゴンが塔の屋根に体を這うとその重みで塔の壁は崩壊した。いくつもの破片が地上へ落下する。音で目が覚めた魔獣達の悲鳴が聞こえる。



「魔王様……勇者がどうやら、塔の最上階に浸入した模様です」


「ナーガはここにいろ」


「ですが……」


 魔王はナーガの感情をなだめるように、顎の下に触れる。彼女の首もとに結んであるヘッドドレスのリボンを解くと、ヘッドドレスがヒラリとベッドに落ちる。

 ナーガはベッドに落ちたヘッドドレスを拾おうと、視線を向ける。魔王はその隙を見抜いて、彼女の首にキスをした。



「……!?」


 ナーガは驚いて頬を赤らめる。

 魔王は行為を辞めようとしない。


「……俺が戻ってくるのを、この部屋で待っていてくれないか?」


「……でも……」





「……魔王様、どうか無理のなさぬよう……ご無事で。

 ナーガは魔王様のこと信じておりますわ」

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