ナーガとの秘密の約束
紅い月が塔の上に上り、辺りを明るく照らす。
僕は首に下げたペンダントを月にかざし
その時を待っていた。
残虐な場面の一部始終を見てしまった彼女は、あれから彼女は部屋に籠り、仕事を大分休んでいる。血の気がおさまった僕は遠くから葬儀屋を早急に手配し、庭に咲くたくさんの百合と一緒に街へと送ってあげた。
僕は一人ベットに腰を掛け、窓の外の月を眺める。
「泣いておられるのですか?」
「……!」
その声はナーガだった。
ナーガは部屋のドアの前でおそるおそる魔王に声をかける。
「私、少しビックリしてしまっただけですの」
「ナーガ?」
「自身の身を傷つけてまで、私たちを守ってくれた魔王様に恐ろしいなんて思いませんわ」
「本当かい……?」
ナーガは少しずつ魔王のいるベットへ近づいてくる。
「ええ、この通りに」
隣に座り、震える魔王の手を両手で包み込んだ。
「もしかしたら、これから、この前よりも強い強敵が現れるかもしれない。君にこわい思いをさせてしまうかも知れない。それなら、いっそうのこと……」
魔王はナーガに抱きつくと、子供のように彼女の膝の上に頬をのせ身を縮めた。
「……大丈夫です」
ナーガはゆっくりとゆっくりとうつ向いている魔王の頭を撫でる。
「……魔王様は自分の意思を失っても、私たちのことを守ってくださいましたわ」
魔王はゆっくりと顔をあげるとその瞳にはうっすらと滴が浮かんでいた。
「それはとてもありがたく感じます」
「……すまない」
「さぁ、魔王様就寝のお時間です。敵はいつ狙ってくるかわかりませんよ? ゆっくり体を休めて、体を治してくださいまし」
魔王は自身のベットに横になる。
魔王を寝かしつけた彼女は背中を向けると、部屋を出ようとする。魔王はその手をつかんだ。
「……」
ナーガは魔王様のベットに倒れる。
強く抱き締める腕はナーガを離さなかった。
「ナーガ……僕は君に背を向けられると胸が裂けそうなくらい苦しくなる」
「魔王様……」
「お願いだ。もうどこにも行かないでくれ」
「はい、魔王様……ナーガはずっと、魔王様のそばに」
紅い月が窓から二人を照らしていた。
その光はだんだん大きくなり……。
それは二人の別れの時を意味していたーー……。




