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第零話「神様はWeb小説家」


「…というわけで、お前には俺の世界で大魔王になってもらうから」

「…へ?」

 純白に見を包む男と向き合うのは、高校生の青年であった。

「それってどういうわけで…?」

 青年は消え入るかのような小さな声でたずねた。

「あー。説明いる?めんどくせーな」

 男はやれやれといった感じで言葉を続ける。

「俺ってば、神じゃん?でー、神界…。んー、まぁ人間の世界と大して変わらんかな。そこでWeb小説家やってんだよねー。でもなんか売れなくてー…。やっぱリアリティって大事じゃん?そこで君に異世界に行ってもらって、その生活を小説にしようってことさ!今流行りの異世界転生ね。」

 神を名乗る男はだんだん嬉しそうに語りだした。

「なんで僕なんですか…?」

「あー、地球に向かって石ころ投げたらたまたまお前に当たったんだよねー。べっつにお前じゃなくてもそこらへんのハエに当たったら主人公にしていたよ?」

 神はなんでもないように返した。

「なんで大魔王なんですか…?」

「俺の好み?君も好きでしょ?主人公が大魔王になる物語」

 すると、青年かぷるぷると震えだした。

「そんなの…そんなの…。うぅ…そんなの…。















大好きに決まってるじゃないですか!!最高ですか!!異世界転生!!ヤッフォー!つまらない毎日から開放させるぜ!いぇーい!!」

 青年は人が変わったように興奮しだした。

「でしょ?でしょでしょでしょお?異世界大魔王転生いいよね?俺TUEEE最高じゃんね?」

「最高だぁー!!!」

 

 彼らが落ち着くまでに必要な時間は決して短くはなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「えー、コホン。異世界転生するまでに、最終調整ができておりません。」

 神はあらたまって発言した。

「えー?なんでよ。」

 青年は友人に話すように言った。いや、友人に話すように、ではなく彼らはすでに友人なのかもしれない。

「まぁまぁまぁ、待ちぃよ。俺にもいろいろあんだよ。異世界転生の準備が済むまでそこにある俺の過去作でも読んでてくれよ。」

「へいへーい。」


「なになに?『ゆうしゃタケヒコの冒険』?どれどれ…」

 青年は小説を手に取り読み始めた。

「お!それは俺のなかなかの自信さ…」

「おもんね」

「はー?なんだとぉ!!」

 神は物凄い剣幕で青年に迫った。そして、別の本を差し出した。

「じゃあこれはどうだ!!」

「えーっと…『転生したら最強になってモテモテになって敵を倒しまくってギルド作って世界救って姫様と結婚して国作って国王になった!!』?題名流石に長くね?」

青年は小説の指摘を始めた。

「うっ…」

「せめて『転生したら最強になってモテモテです!』でよくね?」

「うー…」

 指摘された神は言うに言い返せずごもる。

「それにこのページなんか誤字あるぞ、ほれ」

「うー…」

「ここの場面、主人公の押しが弱いね」

「うー…」

「なんか姫様堕ちるのはやすぎ」

「うー…」

「敵倒すのもかんたんすぎない?」

「うー…」

「主人公ご都合しゅ「お前なんて早く異世界行っちまえ!!!ドーン!!!」」

 我慢できなくなった神は青年を素早く異世界転生させた。これがすべての始まりである。

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