表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/35

No.24 続・休日の過ごし方


うつらうつら気持ちいい微睡み。

久々にどっぷり浸かるみたいに気持ちいい気分。

ポカポカ陽気は最高。

包み込まれる様な温度も最高。


「………ん?」


微睡みが急に遠のいて、ハッと目を開く。

腕枕にガッチリお腹に回る腕。

あぁ…、と思い出して恥ずかしさに悶えます。

弱音なんて吐くつもりはなかったのに。

やらかしました。

ポロッと出てしまった本音に、父様の優しい言葉は心にとけていきました。


「おはよう。よく寝ていたね~僕も気持ちよくて寝ちゃったけど」


「話の途中で寝てしまってごめんなさい」


「気にしなくていいよ~♪一緒にお昼寝も、休日の醍醐味だしね」


よしよしと頭を撫でられて、そうかも~と思いました。

日本にいた時は仕事が休みの時は家事を終わらせると、気ままに読書したり昼寝したり…時々、聖夜も一緒になってダラッとした休日を過ごした。

まだ少し離れただけなのに、懐かしくて心がちょっとだけ痛みます。


「ねぇ、ルナ。僕にルナの話聞かせて?楽しかった事、悲しかった事…なんでもいいよ?」


頭を撫でる手は優しく促してくる。

私は促されるままに、思い出を話します。


「学生の時は、毎日が騒がしくて楽しかったです」


穏やかとは程遠かったけど、友達とワイワイ・ガヤガヤとした毎日は、何より輝いていた気がします。

放課後の教室や通学路でのお喋り。

夏休みのバイトや海で花火。

秋の学校祭やテスト勉強。

冬の鍋パーティーと初詣。

大学生になると、バイト仲間も入って更に賑やかになった。

一度口に出すと、怒涛のごとく言葉が流れていく。


「友達にも恵まれました…だから毎日が楽しかったです」


思い出の中には、変わらず友達の姿があって私を支えてくれました。

蓋を開けてみれば、辛い思い出よりも楽しい思い出の方が多い気がします。


「そっか~、ルナは幸せだったんだね」


父様が嬉しそうに言いました。

そう言われて、ギュッとしていた痛みが少し消えた様に感じがしました。

頷く私に父様は、温かい腕で抱き締めながら微笑んだのが気配でわかります。


「僕はね、ルナが幸せなら良いんだ。あっちにいたルナも、今ここにいるルナも幸せでいてくれたら、僕はとっても幸せになれるんだ」


優しい日だまりにいるような言葉に、ギュッとしていた痛みが消えて、暖かい何かが流れてきます。

温かい体温も優しくて、心がほぐされていくような感じです。


「だから、話したい時には話していいんだよ?僕はいつでもウェルカム!きっとティーノ達だって、聞きたいはずだからね」


お茶目な父様の言葉に、自然と笑えるようになっていました。


「はい…また話したくなったら、話しますね。父様…ありがとうございます」


感謝の意味を込めて言います。

父様の言葉は、今までで一番嬉しかったから。


「いや、お礼を言われるまでもないよ?うーん、なんか照れちゃうな」


「だって、嬉しかったから…。だからありがとうで良いんです」


照れ臭そうにしている父様に、私は笑ってしまいます。

父様はもしかしたら、親バカを抜いたらかなり真面目な人なのかもしれません。


「うん、やっぱりルナは可愛い!さすが我が娘!」


これがなきゃ、素敵な父親なんですけどね。

少し感動したのが薄れてしまいますよ。


「初めていっぱい話したし、ちょっと喉かわかない?」


「そうですね。ちょっとだけ、喉かわきました」


「お昼寝してたから、お昼過ぎちゃったけど…軽食ぐらいなら大丈夫だよね?」


「はい、軽くなら夜に響きませし」


「じゃ、決まり~!行こう!」


即断・即決です。

父様の行動力は、何処から来るのでしょうか?

私を起き上がらせて、手を引いて部屋を出ます。

すれ違うメイドさんや執事さんは、微笑ましそうに一礼していきますが…恥ずかしいですよ!

父様、逃げないので離してください。

切実なる願いは儚いですね。

サロンのような場所に着くまで、手は繋いだままでした。


「ここはね、僕の二番目にお気に入り。庭も見えるし、日射しも入るから読書したり、軽食なんか食べたりするんだよ」


父様が正面に座ると、音もなく現れるシビーさんにかなりビックリします。


「軽食になさいますか?ティータイムになさいますか?」


「軽く摘まめる物がいいな。もちろん、デザートも」


「了解致しました。しばしお待ちください」


当たり前みたいに会話していますが、呼ぶまでもなく現れるシビーさんは何者なんでしょうか。

ベテラン執事にもなると、それは当たり前なのでしょうか?

驚いてマジマジと見ていると、シビーさんは柔らかく微笑みます。


「ゆっくりお休みになれましたか?」


「は、はい。気がついたら寝てしまっていて…」


「それは、良うございました。休日はゆっくり過ごされるのが、よろしいですから」


老執事さんはハイスペック。

なぜ、お昼寝したと知っているのでしょうか?

覗かれていた?

いえ、そんな目で真面目そうな老執事さんを見てはいけませんよね。

きっと、父様の普段の行動からの推理ですよね!

精神衛生上そう思う事にします。

知らない方がいい事ってありますからね!

そんな私の葛藤とは裏腹に、着々と軽食の準備が整います。


「さぁ、食べようか。シビー、ルナにはアイスティーを。僕はいつもので」


「かしこまりました」


シビーさんが用意してくれたのは、アイスティーのストレートと甘いアイスミルクティー。

父様は見かけによらず、甘党のようです。


「ルナもミルクとハチミツ入れる?」


「ミルクだけ頂きます。父様は甘党なんですね」


「うん。甘い物は頭を使うときに、必要なエネルギー源に也るんだよ」


「旦那様は、幼少期の頃から根っからの甘党ですよ」


父様が笑いながら言うと、シビーさんから遠慮のないツッコミが入ります。


「シビー…ダディの威厳がなくなるから、少しお口を閉じようか?」


「威厳は無理かと…まずは暴走する態度を改めて頂きたいです。家人は毎日ハラハラしております」


「そんなに?!最近はヤンチャしてないからね!ルナの前では格好いいダディでいたいのに…」


「あの、多分…格好いいですよ!ちょっと変ですけど」


「変なの?!僕って変なの!?」


「変人・奇人でございますね。最近のルナ様に対する行動を考えてみて下さいませ」


フォロー不可能です。

出会いから今まで…誰が考えても軽くドン引きです。

でも、今日は少しだけ父様が近くに感じました。


「ルナ、ダディを嫌いにならないでね!」


真剣な顔で見つめる父様に、私は笑ってしまいます。

憎めない人とは、父様みたいな人の事を言うのかもしれませんね。


「嫌いになりませんよ?父様は私の父様ですから」


「あー、どうしよう!抱き締めてギュッとしたいっ!ダディはルナが大好きだぞっ!」


「旦那様、暑苦しいです。無駄に騒がないようにしてくださいませ」


シビーさんが、パシッと父様の頭を叩きます。

執事さん、それでいいんですか?!

主人と執事と言うよりは、駄々っ子と嗜める親の構図です。


「この後はどう致しますか?」


「んー…、読書の続きしようか?」


「そうですね。あの本は気になりますし、父様がよろしければ…読めたら嬉しいです」


「じゃ、今度はここで続き読もうか?」


私は即頷く。

腕枕の羞恥プレイは遠慮したいです。

今更ですが十三歳で添い寝は、恥ずかしさで軽く瀕死になれます。

父様はシビーさんに、部屋から本を持ってくる様に頼んで、パクパクとサンドイッチなどを摘まみます。

私もチビチビと摘まみながら、色々な話をしました。

父様は楽しそうに話を聞いて、時々父様やお兄様達の話もしてくれました。


父様と初めて過ごした休日。

父様がとっても近くに感じて、嬉しいのとくすぐったさに包まれました。

こんな休日も、たまには悪くないと思いました。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ