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No.21 お約束の展開です


青空からオレンジに変わる時間帯。


「…お約束過ぎる……」


一緒に歩いていたはずのお兄様方が、急に姿がみえなくなってしまいました。

見えなくなったと言うよりは、私が帰宅を急ぐ人の波に流された、が正しいかも知れません。


「まさかの迷子って……」


漫画や小説じゃないのですから、リアル迷子は痛いです。

しかも、この年齢で。

残念仕様ここに極めたり。

お兄様方には、心配かけて申し訳ないですが…とりあえず道の端によけて待つしかありません。

無駄に動くのは、逆効果だと聞いたことがありますから。

紙袋を抱えたまた、はぁぁぁ、と長い溜め息を吐き出します。


「また心配かけてしまいますね……」


きっと今頃奔走している兄様方を思うと、罪悪感でいっぱいです。

俯きかげんで反省していると、ふっと横から視線を感じます。


「何かお困りですか?」


ハニーブロンドに碧い瞳の美形さんが、私を見て声をかけて下さったみたいです。

兄様方には負けますが、なかなかの美形っぷりに、久々に異世界クオリティーを感じました。


「えーと…」


「僕でよければ、助けになりますよ?」


その笑顔が胡散臭く見えてしまって、何となく曖昧に笑って誤魔化します。


「大丈夫です。きっと待っていればお兄様方が見つけて下さいますから」


「はぐれてしまったのかい?」


「えぇ、まぁ…。」


「じゃ、お兄様方が来るまで僕とお話ししない?」


「え…と、一人で大丈夫ですから…」


一歩後ずさって控えめにお断りします。

空気の読める人なら、ここで分かってくれるはず、でしたが…


「この時間に、君みたいな綺麗な子が一人は危険だよ?人拐いだって少なくないんだから」


空気の読めない人のようです。

胡散臭さ満点の人に、危険だと言われても返答に困りますよ。

貴方と一緒にいる方が危険では?なんて、言えませんけど。

気持ち的には、ばっちり危機感をヒシヒシと感じています。

なぜかは分かりませんが。言うなら直感です。


「君はご令嬢でしょ?その髪の色からして…宰相様の娘さん?」


警戒しつつ頷くと、一瞬ニッと美形さんが口角を上げたのを見てしまいました。

更に胡散臭さが上がります。

もう、天井知らずですよ。


「家まで送ってあげようか?」


「いえ、兄様方を待ちます。きっと心配しているので」


「そうかい?遠慮しないでいいんだよ?」


スッと腕を掴まれた直前、ビシッと火花が散って腕が解放されます。


「心配しましたよ。すみません、人混みに慣れてなかったのに…」


「ティーノお兄様!心配かけてごめんなさいっ!」


どうやら、ティーノお兄様が魔法で助けてくれたみたいです。

すぐ正面にいたティーノお兄様に駆け寄ります。


「ルナっ!良かった…怪我とかないか?」


「はい。大丈夫ですよ?すぐにお兄様方が見つけて下さいましたから!」


「ほら、荷物渡せ。で、誰かと手を繋いでろ。また迷子になったら、探すのが大変だろ」


フィルお兄様は不機嫌に言い放ちます。

でも、その通りなのでフィルお兄様に紙袋を預けてティーノお兄様の手と、ジルお兄様と手を繋ぎます。


「で、貴方は僕の妹に何かご用でしょうか?」


明らかにティーノお兄様は、眇めて相手を見ています。

ジルお兄様もフィルお兄様も、同じような反応です。


「一人で寂しそうだったから、話相手になっただけだよ。良かったね、お兄様方と再会出来て」


「…はい、では…」


ニッコリ笑ったはずなのに、背筋がゾクッとします。

何よりお兄様方の反応を見て、初対面の人が笑顔でいるのが不気味です。

繋いでる手に力が入ってしまったのは、無意識でした。


「そうですね、帰りましょうか」


「あぁ、番犬が迎えに来たら大変だからな~」


「キース殿下ならやるね…お忍び常習犯だし」


美形さんを一瞥した後、クルッと方向転換をして歩き出します。

方向転換するちょっと前、ヒラヒラと余裕の表情で手を振る美形さんが見えました。

近寄りたくない雰囲気が充満していたのが、お兄様方と合流した事でホッとして緊張してたんだと実感しました。


「ルナ、あれには近寄らないで下さい」


歩いている途中、ティーノお兄様が真剣な声で言います。

私はティーノお兄様を見上げてしまいます。


「だね。あれは隠してるけど、負の感情がだだ漏れてるし。何となくだけど、淀んでたよ空気が」


フィルお兄様が当たり前みたいに指摘します。


「空気、ですか?」


「そう。俺にはティーノ兄さんほど魔力はないけど、大きな感情はなんとなく読めるんだよね」


「父上ほどじゃないけどな。俺もだいたいは読めるしな。ティーノなんて、魔力も読めるから俺達なんて足元に及ばないけどな」


「僕だって父上ほどじゃありませんよ?父上を超えるには、まだまだ鍛練が必要です」


苦笑するお兄様方。

私の家族は、ハイスペックみたいです。

魔力以外持たない私は、全く敵う気がしません。


「私も皆さんに心配かけないように、頑張らなきゃダメですね…」


「ルナは頑張り屋なんで大丈夫ですよ?」


「そうだな。勉強だって順調だって聞いているしな~スフィン殿が誉めてたし」


「俺達の妹なんだから当たり前。いじめられたら言えよ?」


「皆さん優しいので楽しいですよ?それに、勉強は必要ですから!」


この世界に根ずくには、やはり知識も常識も必要です。

時間を割いてくれているキースさん達に、報いたい気持ちもあります。

何より私は、あの死の呪いの魔道具を放置したくありません。

エメルさんやシルヴァーさんに宣言した通りに、私は行動すべく考えなきゃいけません。

海老に鯛で釣れるのを待ちつつも、私は出来る事をします。

やっぱり、そのためには勉強は必要不可欠なんですよね。


「だから、頑張れますし頑張ります!」


私が微笑むとお兄様方は、フッと目を細めて頷いてくれます。

それだけで、頑張れる気がするのは現金だと言われても仕方ありません。

優しく肯定してくれるお兄様方に感謝をしながら、私はお城へ向けて足を進めました。



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