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プロローグ~兄達のお茶会

◆プロローグ◆



【ティーノside】


星が綺麗に輝く時間。

珍しく兄弟顔を揃えた食後のティータイム。

十年間待ちに待った日。


「…おい、フィル。いつまで拗ねてんだ?」


「…拗ねてない!」


「完璧に置いて行かれて拗ねてるだろ?」


「ちがーう!別に行きたいなんて言ってない!父上が心配なだけだから!」


「父上なら大丈夫だろ?…暴走しなきゃ、だけどな……」


面白そうにフィルをいじるジルも、どこか浮き足立ってる。

弟達の会話を聞きながら、僕自身も小さな時に離れた笑顔の可愛い妹を思い浮かべて小さく笑う。


小さな体で僕達を追ってきた小さなお姫様は、ある理由で"違う世界に留学"を余儀無くされた。

淡い白銀の髪とアメジストの瞳は、初代女王と同じ色。

初代女王は精霊王に愛され神託を伝える神子だった。

同じ色を持つ神子は、神に愛され国でも数百年に一度人族の神子が産まれ持つ徴。

人族の神子は世界を進展させる存在だと言われ、エルフやドラゴン族は維持させる存在だと伝書されている。

僕達のお姫様は貴重な存在。

故に暗殺を怖れた陛下の命令で、力が開花を迎える時まで姿を変えて違う世界へ隠す事が決定された。

ハイエルフである現神子様が、力を失う前にルナが安全な場所で覚醒する事を願って。

別れの日、小さな妹は守れず悔やむ僕達を、可憐な笑顔で励ましてくれた。


『おにいさまたち、ルナがいなくても泣いちゃダメよ?』


『ルナもいい子でいるから!おにいさまたちもいい子でいてね?』


『ずーっと、待ってるからね!』


父上とスフィン様の魔術が発動して、消えてしまうまで、ルナは可愛いい笑顔を見せていた。

違う時空枠の世界への転移に成功したと聞いて、安心したのと同時に大きすぎる魔術の代償の『記憶』と『魔力』封じが実行された事に、心に大きな穴が空いたような喪失感でいっぱいだった。

でも、同時に次は守れるように…僕達はそれぞれの道で力を付ける事を誓った。

僕は魔術をジルは剣術に打ち込んだ。

十年の歳月が流れて、私とジルが十八才、フィルが十六才になって…やっと僕達のお姫様の帰還命令が神子様から出た。


「ジル、フィルをいじめたら可哀想ですよ?ルナを迎えに行きたかったのは、ジルも僕も一緒でしょ」


「当たり前だろ?十三才のルナも絶対可愛いし、記憶がなくても俺のお姫様はルナだけだからな」


「…本当に覚えてないのかな……。」


寂しそうにポツリとフィルが呟く。


「寂しいのは僕達より、記憶もなく一人で頑張っていたルナの方ですよ?」


「…分かってる…でも……なんかさ…」


フィルの気持ちも痛いほど分かりながらも、一人で頑張ってるルナを考えれば……僕達は寂しい・切ないとは言えなくなる。

きっと何倍も、家族のいない生活は寂しく辛いはずだから。

だからこそ、今度は大切に大切に守ってあげたい。

可愛く優しいお姫様が傷つかずにすむように。


「忘れてしまってるなら、また一緒に少しずつ家族になればいい。守ってやれる力もある、これからはずっと一緒なんだぞ?」


「えぇ、僕達の大切なお姫様の帰りを待ちましょう?」


「分かってる!…無事に会えたかな…」


僕達の小さなお姫様が戻るまであと少し。

どんな成長をとげて可憐になったのか……。

私はお茶を片手に微笑んだ。



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