No.11 目標への第一歩!
ふわふわの微睡みの中。
浮き上がる感じがして、ハッと目を覚ます。
夢の中で考えていたのは、魔法の事です。
マンガや小説みたいに、魔法で大きくなれたり小さくなれる事は出来ないかな~って。
きっとキーになるのは、時間だと思います。
時間を自由に出来たら…ー
「…起きたか?まだ頬は赤いが…大丈夫か?」
キースさんが、私を覗きこむように見ていました。
「えーと…お城の部屋ですよね?」
「あぁ、ルナの部屋だぞ」
・・・、いつ私は帰宅したのでしょうか?
嫌な予感でいっぱいです。
「丸2日寝てたから心配はしていたが…熱も高くないみたいだな」
キースさんがベットに腰かけて、私の額に触れます。
心配させてしまって申し訳ないのに、触れられた手が優しくて頬が緩みます。
「2日も寝ていたのですか?」
「あぁ、看病は皆で交代でな。初めての経験だったな」
「ごめんなさいっ!」
ガバッと頭を下げます。
土下座したいのですが、額にキースさんの手があるので出来ません。
やらかした感半端ないです!
「俺こそすまなかった。確信はあるのに証拠がなくて、断罪にいたらなかった…」
申し訳なさそうなキースさんに、私は笑います。
だって、今回の事はこのまま終わらせる気なんてありませんから。
「大丈夫ですよ。このままにはしませんから!被害者は私で、仕返しは許されますよね」
私はエメルさん達と話していた事を思い浮かべて、宣言します。
負の遺産なんぞは眠らせておけば良かったのを、使用した自分を恨んで下さい。
私はやめるつもりは、毛頭ごさいませんよ。
「危険だぞ?」
「上等です。何もしなくても危険なんですから、何かして危険な方が納得できます」
「大きな権力持ってるかもしれないぞ?」
「望むところです。権力が全てではありませんし、私みたいな小娘にやられて悔しがればいいと思います!」
見た目で侮ると痛い目みるんですから。
決意は固いのですよ。
あんな危ない魔道具を使用する危険性を、しっかり思い知らせてやります。
キースさんは難しい顔で黙り込むと、少ししてから私の頭を撫でます。
「分かった。でも、危険だから一人で突っ走るな。俺達も手伝うから」
「…善処します」
突っ走らないとも限らないので、曖昧に笑って言葉を口にします。
この世界に不慣れなので、正直に何が危険なのか分かりません。
「まぁ、今はその返事で勘弁してやろう。無茶しないように見てればいいからな」
よしよしと撫でられながら、私は苦笑してしまいます。
どうやら、危なっかしい人認定されたようです。
そんな危険に首は突っ込みませんよ?
…多分。
そう思っていると、寝室のドアが開きます。
「体調はいかがですか?」
「…魔力もだいぶ、落ち着いてきたな。熱は…少しあるみたいだな」
入ってきたのは、頬笑むカイルさんと相変わらずなスフィンさんです。
スフィンさんの顔を見て、微睡みで考えていた事が頭にポンッと浮かびます。
「はい。体調はちょっとダルい程度ですが…あの、スフィンさん。ちょっと聞きたい事あるのですが」
時間の魔法があるのか。
例えば、昔の魔法少女みたいに大きくなったり、小さくなったり出来るのか。
カギは時間だろう事も話します。
「どうでしょうか?」
「現在存在していない。ただ、ルナなら可能かもしれない…ルナの魔法はイメージ重視で、俺達みたいな固定観念がないからな」
「固定観念、ですか?」
「例えるなら、複数の魔法は使えないとかなど、ルナにはないですからね」
あぁ、と納得です。
魔法が一つなんて縛りは、オタクだった私にはありません。
ゲームなんかは、複数も普通にありますから。
魔法がイメージなら、小説やマンガ、ゲームで鍛えた私に死角はなしです。
「試してみたいです!」
「ダメです。体調が整っていないでしょ?」
「ダメ、ですか?」
「ダメです。熱が下がってからじゃないと、また上がりますよ?」
「うっ…分かりました」
間髪入れずにカイルさんからのダメ出しに、情けない顔になってしまいます。
今なら出来そうなんです!
頭の中でイメージがちゃんと出来そうなのに。
泣く泣く諦めて布団に潜ります。
ポンポンと規則正しい振動は、私を眠りに誘います。
それから、二日間ベットで優しく過保護な皆さんに、甘やかされて過ごしました。
そして、今日やっと寝室から出れました。
朝には兄達から、ユーリとフィルさんからの一週間後の訪問の申しでも聞きました。
最初に!゛フィルさん゛って誰?!と思ったのは、許して頂きたい。
ティーノお兄様に言われて思い出しました。
私をキレさせた人で、顔をしかめてしまったのは見逃して下さい。
でも、そんな彼はユーリの婚約者らしいです。
不思議な縁ですね。
そんな事を考えながら魔法を試したいと思って、スフィンさんにフォローをお願いしました。
「では、始めますね」
スフィンさんは無言で頷きます。
目の前には、大きなアンティークな鏡が一つ。
私は深呼吸して呟きます。
「クロック・オーバー二十」
キラキラした光が集まります。
光が消えて首を傾げます。
失敗ですかね?
ふっと鏡を見て驚きます。
淡い銀髪の美女がいました。
「成功だ。魔力消費は大きいが…しかし、光と闇を合わせ持たないと無理だな」
「光と闇?」
「属性。光と闇の力技と言っていい」
力技ですか!
私は脱力して鏡に手をつきます。
危なっかし度が、右肩上がりしてる気がしているのは気のせいですか?
納得できませんよ。
神様、貴方様は私に何をさせたいのですか?
何はともあれ、新しい魔法を手に入れました。
目標・平和な日常に向けて第一歩です。




