白の国へようこそ!
「今日は、今年一番の寒さになるでしょう。お出かけの際は、防寒対策をしてー…」
いつもと変わらぬ笑顔で、お姉さんはお天気を伝えてくれた。
淡いピンクのコートと、チェックのマフラーが可愛らしい。
茅野くるみは、そんなお姉さんの声を聞くと、パジャマの上から手早くコートを羽織りそそくさと玄関へ向かった。
明らかに今日の寒さには耐えられないであろう服装だ。
うっすらと光る銀のノブに手をかけると、ひんやりとした冷たさが伝わってきた。そんなことは気にせず、一気に体重をかけ、ドアを開ける。
ゴウ、と寒気が押し寄せてきた。鳥肌が立ちそうだ。
ブルブルっと身震いをすると、くるみは小走りになりながら玄関ポストへ向かった。
はあ、と吐き出した息が白く空へ消える。
随分と色がはげてしまった赤茶のポストは、もとは真っ赤だったのであろう。それもきっとくるみが小さい頃の話で、もう記憶には残っていないが。
取っ手に手をかけると、身体中に一瞬にして冷たさが駆け巡った。
どうしてこうもみんな、外の寒さに負けて冷たくなってしまうのか。
ポストの中をろくに確認もせず、新聞を取り出すと、くるみはまた玄関へ走っていこうとした。
その時だった。足元で、何かがきらりと光った。
眩いほどに白かった。が、目を凝らすと、ただの封筒である。