晩餐会はバイキングで
俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。
魔道トーナメントの地方大会で優勝した俺たち。
地方大会といっても強豪校の多い俺たちの地方で優勝したのだから、
それは全国で活躍したに等しい栄光なのだ。
ともかく、俺達はショッピングセンターのバイキング店へとたどり着く。
「着いたわよ!」
『VIVA!VIKING!』と書かれたその看板は、
いかにもバイキングのお店といった体であった。
ちなみに食べ放題店のことをバイキングと呼ぶのは、
俺達の国であるジパングだけである。
本来は海賊という意味のブリテン語らしい。
それがいつのまにかやりたい放題という意味として、
食べ放題に使われ始めたらしい。
まあ、今の俺達には関係ないことではあるが。
夏葵が受付をする。
「玉央学園です」
「六名様ですね。少々お待ちください」
四角いテーブルに椅子が横側に四個、縦側に二個と向かっている。
ちょうど六名席のようだ。
「さあ、取りに行くわよ!」
夏葵がそういうと、
ほかの四人はいわれるまでもないといわんばかりに駆け出していく。
俺も少しばかり遅れをとったが、食材を取りに向かう。
「しかし、色々あるな……」
料理も西のものから東の物までたくさん揃っている。
カレーやスパゲッティ、ピザ。
さすがにラーメンまではないものの、
それでもスープは様々な種類の物がある。
当然サラダだって豊富に存在しているので、
野菜不足になる心配はない。
俺を含めた各々が思い思いの食材をとっていると、
俺はゆめにこういわれる。
「あなたは取りたいものを片っ端から取ってる感じ?やっぱ男の子ね」
そういうゆめの取り皿はバランスよく整えられている。
ちゃっかりピザがあるあたりが彼女らしいとも思ったが。
「そうだな。俺はバイキングなら食べたいものを優先する派だ」
俺の取り皿にスパゲッティにハンバーグ、カレー。
一応サラダもあるがゆめと比べて偏っている印象がある。
自分でいうのはちょっと違うかもしれないが、
我ながら偏ったラインナップだと思う。
ともかく席に戻り、ジュースを取りに行く。
コップは手がかさばるのでいったん取り皿を置いてから、
そのまま取りに行った方が俺はやりやすい。
そして席に着き、俺はこういう。
「いただきます」
そういった俺はとりあえずスパゲッティを食べ始めた。
ゆめがいってたこともあり、かなり美味い。
カレーも絶妙な辛さで美味い。
ただ、子供向けではない。
子供カレーが別個に存在していたのを鑑みるに、
子供にはそれを取ってほしいということだろうか。
「ずいぶんおいしそうね」
そういってきたのは幸美だった。
「ああ。かなり美味いぞ」
幸美はなんとなくサラダが中心のように見える。
ただエビのサラダだったりハムのサラダだったりで、
サラダのおかずにこだわっている感じだ。
「やっぱ気になるのか?」
「いいえ。こういうバイキングではサラダの味が大事なのよ」
嘘をつくにしてはきっぱりいい切ったので、
恐らくサラダを先に食べたかったのだろう。
冷静な幸美らしいチョイスかもしれない。
続く由莉はピザやスパゲッティを中心に、
サラダを盛っていた。
俺よりはバランスがいいかなって感じだったから、
まあ彼女らしいかなと思った。
続いての夏葵は野菜入りのスープやコーンスープとスープを中心に、
ついでのようにピザが乗るラインナップだった。
むろん、席に着いた人はほかの人を待たずおもむろに食べ始めていた。
最後に来た穂花はピザを乗せまくり、そこにサラダを乗せて野菜を補うような感じだった。
「なかなか美味しいわね。ゆめのおすすめだけはあるわ」
「幸美のいう通りね。このピザかなり美味しいわ」
「穂花はピザばっか取ったもんな」
「失礼ね、サラダもちゃんと取ったわよ」
すると由莉はこういう。
「そういうのをちゃんと気にしたのは偉いと思うけどね」
「サラダを取りまくった私にいえることじゃないけど、子供ね」
「プロモーションならゆめ以外には負けてないわよ!」
「穂花の方が一応年上だしな」
「分かっているじゃない、真彦」
そういった穂花に対し、幸美はこういう。
「そういうところが子供っぽいのよ」
「それも一理あるわね」
「夏葵らしいな、それ」
俺達は地方大会の優勝を目指して戦い、
共に汗を流していった。
そしてその結果、俺達は優勝という栄冠を掴んだ。
だが、俺達の物語はまだ終わらない。
こういう風に大切な仲間と過ごす日常は、
これからもずっと続いていくのだから。
そしてそうやって仲間と共に過ごしていく日々は、
決してハーレムとかいう物じゃない。
今時ハーレム物なんてありきたりで、
『脇役志望の俺がハーレムを形成していた件』なんていっても売れないだろう。
だから俺は主役になってハーレムを形成するなんてことはせず、
あくまで脇役として魔道部と一緒に日常という物語を歩んでいく。
いつか一人ひとりが未来をめざし、それぞれの道を歩むその日まで。
それは脇役として主役を支えたいと望む、
俺の強い思いなのだから……
トーナメント編完