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地方大会決勝・主将

 俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。

 優勝が既に決まっていたもののそれでも負けはしまいと夏葵も戦い、

そして勝利を収めた。

 それを見た俺は彼女にこういう。

「やるな。夏葵。奢りの件もあるし、尚更負けられないな」

 別におごりがキツイとかそういうわけじゃあない。

 しかし奢らなくて済むならそれに越したことはないし、

何より他のみんなが勝ったのに俺だけ無様な姿は見せられない。

 もし負けるとしても精一杯やりきった上で負けなければ、

魔道部のみんなを幻滅させてしまうだろう。

「で、相手は由莉のお兄さんよ。どうするつもり?」

「穂花にいわれるまでもない。彼は加速してのブーストナックルが得意技だが」

 すると、ゆめはこうさえぎる。

「あれは直線にしか攻撃できなさそう、ってこと?」

「仮に曲がれたとしても距離が足りないだろう。だから、軌道から出ればいいわけだ」

「確かに、技を使っていなきゃ身を引くくらいの隙は充分にあるからね」

 幸美もそういった。

 楓が道秀との戦いまでそれを封じたのは、

道秀に加速攻撃のことを知られたくなかったからだろう。

 さすがに、道秀はあれをしってて対処できないほど弱くない。

 彼は力任せが主だったとはいえ準決勝まで駒を進めたわけだし。

 知っていれば懐ががらあきになるような技を使い、

わざわざ加速攻撃が打ち込みやすい状況を作ることはなかっただろう。

 むろん彼にそんな状況を自ら作る意図なんてなかっただろうが、

結果論からいえばそうなるということである。

「ただ、慎重に動きすぎても双方決め手がないなんて状況になるからな」

 すると、由莉がこういう。

「そのための爆砕波っていう側面もあるからね」

「なるほど、隙がある技をカバーできるっていうわけか」

「むしろ、カバーできるからこその加速戦法なわけだし」

 それを聞いた俺はこう返す。

「確かにその通りだな。この後のためにも、しっかり勝ってくるぜ」

「いってくれるわね、真彦」

「焚きつけたのは夏葵だろ?まあ、いってくるさ」

 そういって俺はマットへとあがる。

 その向こう側には楓が居た。

「さあ、いよいよ主将戦です」

「初参加にしてストレート勝ちでの優勝を狙わんという勢いの玉央学園」

「しかし、それを八笠台学園が黙って見過ごしておくわけもありません」

「なんといっても、八笠台学園の主将を務めているのはいわずと知れた英雄です」

「玉央学園の主将和久井真彦。八笠台学園の主将、三枝楓」

 それを聞いた泰彦はこういう。

「英雄、か。やっぱり君は主人公気質なんだろうな」

「自分でいうのはおこがましいけど、良くいわれるね」

「やっぱそういわれたりするのか?」

「アニメが好きな人とかにはね。でも、僕は悪い人を放っておけないだけなんだ」

「警察官に向いてそうなタイプだな。そのへんは尊敬するが」

「勝負とは別、というわけだね。分かっているよ」

 そして、俺と楓が構える。それを見た上で、審判はこういう。

「それでは、試合開始です!」

 すると、楓がいきなり仕掛けてくる。

「爆砕波!」

 爆発が襲う地点は、火薬らしき物の軌道で分かる。

 なら、そこに技を撃てばいい。

「バーニングフィスト!」

 俺は拳に炎を纏い、その炎を放つ。

 すると火薬らしきものとぶつかり、爆発が起きる。

「なるほど、そうくるか」

「まあな。伊達にここまで勝ち上がったわけじゃない」

「だったら、これで!」

 楓は俺の方に近づいてくる。

 いっそ魔法抜きの武術で俺を叩こう、ということだろうか。

 しかし、そんな単純な手ではないはずだ。

 なにより、魔道は魔法と組合した拳法だ。

 魔法抜きでの戦いはルール違反ではないが、

展開的に不利となる。

「バーニングフィスト!」

 相手の狙いが分からないので、俺は正面に向けて拳に纏った炎を放つ。

 こうすれば俺にブーストナックルをぶつけることはできないはずだ。

「ブーストランナー!」

 楓はそういって俺から見て右方向に緊急回避する。

「そうはいくか!」

 俺は彼が回避した方向へと走りこむ。

「この近距離じゃブーストを使ったら事故る……だが!」

 楓は構えずに、俺の左側へと向かってくる。

 爆砕波を使わないあたりは冷静だが、

だからといって感心しているだけではいけない。

 俺もまた遅れつつも、その動きに合わせ方向転換する。

「僕達は追いかけっこをしてるわけじゃない!行くよ、爆砕波!」

 それを見た俺は、飛び上がった上で彼に向けて前方宙返りをかます。

 ゆめがやったときと違い仮に駄目でも爆発が腹に当たるくらいなので、

そんな危険な賭けでもない。

 しかし、練習もなしにやるのはちょっとばかりリスキーだと思った。

 ともかく宙返りして無事着地し、

爆発を背にして楓の目の前に迫った俺はこういう。

「バーニングナックル!」

 さしもの楓も俺が前方宙返りしてくるとは思わなかったらしく、もろに食らってしまう。

「うわあ!」

 それを見た審判はすかさずこういう。

「勝負あり!泰彦選手の勝利です」

 すると楓がこういう。

「まさか、君が前方宙返りするなんてね」

「そうでもしないと勝てそうになかったからな」

 そういって俺は仲間の元に駆けて行った。


続く

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