地方大会決勝・副将
俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。
中堅である幸美が勝利したことによって、
三勝を得た俺達はひとまず優勝が決まっていた。
だから少しは楽が出来そうだ。
ともかく、幸美が帰ってきたのを見た穂花はこういう。
「やったわね、幸美。これでひとまず優勝は確定ね」
「でも、これからだって大事よ。勝ったからといって手抜きは許されないからね」
それを聞いた俺はこういう。
「当たり前さ。そういうのは相手に失礼だって前にもいったしな」
「私も手は抜かないわよ。ただ、少しは気が楽になったかもね」
すると由莉はこういう。
「ともかく、優勝したわけだし何かしようかしら」
「だとしたら、誰かが負けたらその人たちが晩餐会の分を奢るってのは?」
それを聞いた夏葵はこういう。
「いいわね、もし両方が勝ったら私のおごりでいいわ」
すると、幸美はこう返す。
「随分と太っ腹ね」
「私には、ファミレスで一食五人分払うだけの余裕ならあるからね」
「すごいんだかしょぼいんだか分からないな……」
俺は率直な意見をいったつもりだ。
俺が奢りはきついなと思っていると、夏葵はこういう。
「ともかく、次は私の番ね」
そういうと幸美はマットへ上がる。
対戦相手の聖人もマットで相対していた。
それを見た審判はこういう。
「会場がにわかに、それでいて確実にざわついています」
「何故かはみなさんお分かりでしょう」
「それは、初参加であった玉央学園が三連勝で優勝を決めたからです」
「しかし、かといって八笠台学園の生徒が弱かったわけではありません」
「これはお互いがお互いの全力をぶつけたが故の結果なのはいうまでもありません」
「果たして、これから先の二戦はどうなっていくんでしょう」
「そういうことは、誰も予想ができません」
「玉央学園の副将我満夏葵。八笠台学園の副将、菊屋聖人」
それを聞いた聖人はこういう。
「こんな展開になるとはな。だが、このまま負けとおすわけにもいかない」
「こっちだって、負けてあげるわけにはいかないのよ」
「ああ。なら構えようぜ、夏葵」
「分かっているわ」
その会話を聞いたのか、審判はこういう。
「それでは、試合開始です!」
「シルバーロッド!」
夏葵は杖を召喚する。
「なら、ウッドソード!」
聖人は木の剣を形成する。
「接近戦で仕掛けてくるつもりなのかしら。ウッドストリームには気をつけないと」
そういいながら、夏葵は距離をつめようとする。
「金属性相手じゃウッドストリームはそうそう打てない。なら!」
「あの時」
「確かにそうだけど、当てれるものかしら」
江里子がそういうと、二人は膠着状態に陥る。
だが、夏葵は咄嗟に杖を投げる。
「ロッドスロー!」
投げられた杖はそのまま木の剣で弾かれる。
「その杖は囮よ。プラスチックナイフ!」
「ナイフを形成したの?」
聖人はそういった後で、こういう。
「ウッドカッター!」
「木の葉でカッターを作ってくるのなら!」
夏葵は爽香が居る方向へと走っていく。
「さすがにやるわね、でも!」
「そうはいかないわよ!」
夏葵は爽香に向かってナイフを投げた。
「ナイフを蹴り飛ばしさえすれば!」
聖人はそのままとび蹴りをかます。
「うわっ!?」
夏葵はとっさに身を飛びかわすが、マットの外に出てしまう。
それを見た審判はすかさず宣言する。
「爽香選手に有効1です」
「うっかりマットから出ちゃったわね……でも!」
夏葵は、今度は落ちていた杖を取り直す。
「シルバーチェンジ、イグニッション!ソウルブレード!」
「ちっ、最初からそれが狙いか。一本取られたな」
「だが、このまま負けるわけにはいかない!」
そういって聖人は夏葵に踏み込もうとする。
「この距離なら、私だってそう負けないわよ!」
すると夏葵は聖人の持つ剣を切り払いつつ、
思いっきり蹴りを入れる。
「なっ!」
蹴りを思いっきり入れられ、一瞬聖人が倒れたのを見た審判はすかさずこういう。
「夏葵選手に抜群1です」
これで点差は夏葵に有利となる。
「くっ、このままじゃあ!だが、ウッドストリームを撃つ暇もない」
すると、夏葵は剣を消散させる。
といっても形成した物を消散させることで魔力を少し回復しただけであり、
相手が作った金属とかを消滅させることができるわけではない。
いってしまえば魔力を少しでも節約し、
手数を増やしたい時の手段にすぎない。
「なめてはいないはずだが、やはり少しでも時間を稼ぎにきたか」
「分かっているなら、止めてみなさい!」
しかし聖人は動けない。
何してくるか分からない以上下手に動くと返り討ちなのだろう。
と思っているととうとう動き出す。
「食らえ、ウッドカッター!」
夏葵がそれをかわすと、聖人は距離を詰めてくる。
だが、そこで審判がこう宣言してくる。
「そこまで!時間切れにより、夏葵選手の判定勝ちです」
それを聞いた聖人はこういう。
「時間切れか。さすがに慎重を期しすぎたか」
「だけど、無闇に突っ込まない分は良かったと思うわ」
夏葵はそういって、俺達のところに戻ってくるのだった。
続く




