表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/61

地方大会準決勝・主将

 俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。

 副将である夏葵が判定負けして、

戦いの鍵は主将である俺の手にかかっていた。

 だが、俺がマットへ向かう前にまずは夏葵を迎えなければなるまい。

 そう考えていると、穂花がこういってくる。

「中々いい戦いだったわよ」

「ありがとう。でも、負けは負けよ。しっかり精進しないと」

 すると、ゆめがこういう。

「決勝でどっちに当たるかは分からないって前にもいった気はするけど」

「万が一、荒丘学園に当たったらどうしよう……」

「なるようにしかならないさ。力押ししてくるだけなら、隙を見て攻撃すればいい」

 それを聞いた幸美はこういう。

「確かに、彼らは力任せの戦い方だったわね」

「相手も伝統ある学校といえどほとんどが新人だったり、注目を受けてない学校だったり」

 俺は幸美の推理を聞いてこういう。

「つまるところ、力任せで何とかなったってことか?」

「それは納得いかないわ。伝統がある学校であれば相応の実力者を選ぶはず」

 夏葵の意見に俺はこう返す。

「それは少し失念してたが、力任せのやり方を知らなかったが故に意表を突かれた可能性もある」

「その可能性は確かにありえるわね。あの挑発をはったりと捉えた可能性がなくはないし」

 夏葵が俺の意見に同意したのを見た由莉はこういう。

「だとしたら油断で負けたってこと?そう考えると伝統があるのをいいことにたかをくくってたのね」

「とはいえ荒尾学園の連中も戦意は高いし、油断はできない」

 俺はそういうと、由莉はこう返す。

「そうね。私はあの波動から良くないものを感じたし」

「油断してやるりゆうはない、か。いずれにしろ、そろそろマットに上がらないとな」

 そういって俺はマットへと上がる。

 俺の相手となるべき奴も、向こう側で対峙していた。

「さて、いよいよ主将戦です」

「ここまで、主将に恥じない戦いをしてきた両者」

「この戦いはお互いの命運を分ける一戦になります」

「玉央学園の主将和久井真彦。旗井山学園の主将、郷原夏歩ごうはらなつほ

「この戦いからは、片一時たりとも目が離せません」

 そういう審判の紹介を受けた夏歩はこういう。

「あなたが、玉央学園の主将なのね」

「そうだ。だが俺は脇役だ。それ以上でも以下でもない」

「それってどっかで聞いたような気がするけど、まあいいわ」

「問題なのは俺が強いか弱いか、というわけか」

「分かっているじゃない。自称脇役の力、見せてもらうわ」

 自称といわれてはそれまでだが、俺はあくまで脇役だ。

 しかしそれで動揺するわけにもいかないし、

俺は身構えた。

 すると、審判がこういう。

「それでは、試合開始です!」

 先手を掛けたのは夏歩のほうだった。

「サンダーストリーム!」

 彼女が雷属性だというのは分かっている。

 彼女が拡散して放った雷に向かい、拳を突きつける。

「バーニングフィスト!」

 俺が拳に纏った炎は、彼女の放った雷に向けて放射される。

 拡散した炎は俺が放った炎にぶちあたり、

勢いで負けて弾かれる。

「あなたが雷属性だってこと、私が知らないと思って!?」

 夏歩はそういって俺の左側に向かってくる。

 接近戦を仕掛けようということだろうか。

「そう来ることも想定内……といいたいが対処できるタイプじゃないな」

「なら、遠慮なくやらせて貰うわ!」

 彼女が蹴ろうとするのを、俺は拳を突きたてて牽制する。

 彼女が身を引くのを見ても、突っ込もうとは思わなかった。

(夏歩は俺の戦いを見てきたはず。なら、ここで突っ込むと踏む)

 俺の思ったとおり、彼女は蹴りをかます体制になっていた。

「食らえ、バーニングフィスト!」

 俺は炎を纏った拳から、彼女に向けて炎を放射する。

「しまった!」

 夏歩はそういうと、もろに炎を食らった。

 とはいえ当たったのは制服だし、身体が焼ける心配はない。

「勝負あり!勝者は真彦選手です!」

 それを聞いた夏歩はこういう。

「癖を読みすぎたわね……」

「だが、よく観察していた。もし突っ込んでいたら、間違いなくやられていた」

 俺はそういって仲間の元へ歩む。

 すると、俺は穂花にこういわれる。

「やったわね!で、この先どうするの?」

 休憩室に向かうか、観客席で次の戦いを見るか。

 むろん休憩室でも戦いは見れるが、

由莉が近くにいれば兄である楓はより力を出せる。

 俺は穂花の質問の意図がそうであることを確信しつつこういう。

「俺は観客席で試合をみるつもりだ。みんなは、どうしたい?」

 すると、夏葵はこういう。

「体力は温存してるし、問題ないわ。それにあなたの狙いは私も分かるわ」

「上手く行くかどうかは分からないが、ともかくやってみないとな」

 それを聞いた幸美はこういう。

「私も賛成よ。次の戦いは、じっくり見るべきだと思うから」

「私も、親友の親戚が居るから見ていたいしね」

「ありがとう、みんな。これだけいれば、お兄さんもきっと勝つよ」

 由莉は楓の妹だし、元々観客席で見ようと思っていても不思議ではない。

 ともかく、全員の意見は一致し俺達は観客席で試合の経過を見ることとした。


続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ