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地方大会準決勝・中堅

 俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。

 由莉が負けてしまったのは予想外だったが、

さすがに準決勝ともなると相手は強いのだろう。

 ともかく、こうなると中堅にかかるプレッシャーはかなりの物だ。

 負けたほうが圧倒的に不利だからだ。

 幸美は冷静だから、そういうプレッシャーには強いのだろう。

 正直俺だったらプレッシャーに飲まれかねない。

 やってみたら行ける可能性も否定はできないが、

それを差し引いても美幸の冷静さは凄いものだと思う。

 そう考えていると、幸美がマットに上がる。

「玉央学園の中堅高見澤幸美。旗井山学園の中堅、ゆみあゆみ」

「どちらも譲らぬ展開に、会場からは『帰らなくて良かったー』という雰囲気がただよっています」

「この一戦はまさしく、魔道大会の新たな伝説となるのかもしれません」

「今日の試合でどれだけの戦いが起こるかはわからないのでそれも不透明ですが」

「それでも今日の試合は荒丘学園が張り詰めた雰囲気を出していただけに」

「こういった戦いは、まさに見ている方の心を掴むんでしょう!」

 審判がそういうのに対し、幸美はこういう。

「中々良いいい方だと思うけど、それで乗らなきゃいけない理由はないわ」

「冷静なのねあなた。重圧とかも感じてないみたいだし」

「重圧なんて跳ね返す物よ。あなたもそうよね?」

「私はむしろ逆。どんな時も何とかなるで乗り切っているだけよ」

「楽天家なのね。真彦とは違った意味で面白いわね」

「そうかな、ありがとう!」

 そういうあゆみに対し、幸美はこういう。

「別に褒めていないわよ……夏葵とは違った意味での天然さんかも」

「天然?私は養殖されたわけじゃないわよ?」

「天然の意味を間違えてるわ」

「合成着色料を添加してあるからそっちの意味じゃないし」

 幸美は思わずこう返す。

「そっちの天然を知ってる人なんてどのくらい居るのかしら」

「と、さすがに戦わないと」

「属性は調べてないのかもしれないけど、容赦はしないわ」

 幸美がそういうと、審判がこういう。

「それでは、試合開始です!」

 二人が向き合うなり、あゆみはこういう。

「バーニングフィスト、ってね!」

 彼女の拳に纏われた炎が、幸美を襲う。

「くどいわね、フリーズウオール!」

 氷の盾が炎を防ぐ。

「そうやって防いでくるってことは私でも分かるよ」

「技を防がせて属性を見極める……一歩間違えれば自殺行為よ」

「だからといって動かなきゃ何も始まらないよね?」

「あなたのそういうところ、嫌いじゃないけど!」

 幸美はそういいつつ、こういう。

「フリーズブレード!」

 幸美の右手側に剣が形成され、彼女はそれを持つ。

「近づけなきゃ意味無いわよね?でも!」

 あゆみはあえて幸美に踏み込んでいく。

「こういう時は!」

 そういって幸美は左方向に回り込む。

 持ち手と反対方向に回り込み、

斬撃を食らわせようと思ったのだろう。

「そうはいかないよ!」

 しかし、それに気付いたのかあゆみは身を引く。

 するとそれと同時に幸美も身を引く。

 そうすれば引く振りからのバーニングトルネードに、

当たる確立はかなり低くなるからだ。

 俺は幸美とはやりなれているからそのまま殴りぬけるが、

あゆみはそんな癖を知る由もない。

 これは読みあいだけでなく、癖を知っておく必要がある。

 バーニングナックルで殴ってくると見えていれば、

身を引かずそのまま切りつければいい。

 しかし別々の学校なのでそんなことは予想できないし、

こういう時は感で戦うしかないのだ。

「バーニングフィスト!」

 あゆみはあわててフォローするが、

幸美は剣を捨てて左に回り込む。

「遅いわ。フリーズナックル!」

 そしてそのまま、幸美はあゆみを氷を纏った拳で貫く。

「っ!?」

 あゆみはどうにか身をかわすが、かわしきれずわき腹に拳を食らってしまう。

「おっと、あゆみ選手倒れてしまいました」

 わき腹だと抜群ではあるが、

そのまま相手が倒れたらカウントを取る。

「10!勝負ありです。勝者は幸美選手です」

 10カウント以内に相手が起き上がってこなければ、

抜群ではなく勝負ありになる。

 魔道のルールを知らない場合はボクシングのようだなと思うかもしれないが、

わき腹へのダメージは場合によるためそういうルールにならざるを得ない。

 魔道は中学生になったら空手や剣道といった護身術として習うことがある。

 特に剣道のように道具が必要な武道を教えられないような規模の学校なら、

魔道は優先的に覚えることとなる。

 この学園は魔法を中心にした戦いなので、

近接戦における魔法の使い方として魔道を習う。

 しかしどちらかというと実戦における魔法が主なので、

接近戦になるときはよほど戦場がもつれて魔法が使えない場合になる。

 とはいえこの国は防衛戦争しかやらないため、

市街を守りながら戦うのに白兵戦の技術はうってつけだったりもする。

 ともかく、幸美はあゆみにこういう。

「中々凄い戦いだったわ」

「頭が回るのね……尊敬するわ」

 あゆみがそういうのを聞いた後で、幸美は俺達のところに戻るのだった。


続く

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