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地方大会ベスト8・他校

 俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。

 主将戦までもつれ込んだベスト8はどうにか俺達のチームの勝利で終わらせ、

無事準決勝まで進出できた。

 それを見ていたのか、穂花が声を掛けて来た。

「やったわね、真彦」

「まあな。折角だし、準決勝までは勝ち進みたいなって」

「随分と弱気ね。このまま決勝まで行こうよ」

「優勝といわない辺り、やっぱりあの荒丘学園の連中が気になるのか?」

 俺がそれを聞いても穂花は黙り込まずこういう。

「確かにそれは気になるわ。けど、それはきっとどうにかなる」

 すると、幸美がこういう。

「正直な話、相性が悪い彼らに勝算なんてないわ」

「勝算が無くても、立ち向かわなきゃあいつらの思い通りになるだけよ」

 由莉が女の子ながら『あいつら』という辺り、

彼女は彼らを暴虐な連中だと思っているらしい。

 確かに彼らは力で何もかもねじ伏せようとするヤバイ連中だが、

敗れた相手をねぎらうかの行動もしていた。

 彼らは力でねじ伏せつつも、戦った相手の心までは折ろうとは思ってないようだ。

 そんなことをしたらねじ伏せる相手が居なくなってしまうと考えているだけだろうが、

良くも悪くも筋は通っている連中だと思う。

 悪役のような立ち位置に居るものの、

それでも相応の美学を貫く彼らにはある種の尊敬の念も抱かされる。

 しかしそれ以上に野獣のような恐ろしさもあるので彼らはやはり、

誰かが立ちふさがらないといけない悪役といって差し支えは無い。

 まあ、それはさておき俺たちは休憩室へと向かう。

 旗井山学園と近笹川学園の戦いはかなり伯仲していた。

 どうやら狛幸野学園は賑やかしのために参加したらしい。

 実際休憩中の彼らの表情を見ていると、

『まあしょうがないか』といった雰囲気を感じる。

 彼らは来年またここに来るのだろうが、

来年のことなんていったらオークが笑う。

 ともかく旗井山学園と近笹川学園の戦いを見ていたのは、

前と同じく俺と幸美だけだった。

 色気より食い気とでもいうのだろうか。

 正直その気持ちは分からんでもないが、

もう少し真面目にやって欲しい気がする。

 そして戦いを見ていると、とうとうお互いに主将が出てきた。

 二勝二敗の戦いなので、この勝負次第で全てが決まる。

 文字通り勝つか負けるかの戦いだ。

 実際に戦っているわけではない俺でさえ、

思わず手に汗握るくらいだ。

 点の取り合いの果てに戦いは延長へともつれ込む。

 先に決めたのは旗井山学園の主将だった。

「凄い戦いだったな。俺が戦う時参考にできればいいが」

 そして荒丘学園は七岬学園と戦いに入る。

 やはり彼らの力は圧倒的だ。

 惨劇に見えないのはこれがルールのある戦いだからなので、

それでも圧倒的な力を持つゆえにとんでもないことがおきている。

 こんな圧倒的な連中に対抗できる希望は楓たちにあるんだろうか。

 俺は八笠台学園と舞川学園の戦いから目を離せず、

思わず固唾を飲んでいた。

 その戦いは互角だった。

 相手は優勝候補だし、とんでもないことだろう。

 実際、審判も『見ごたえのある試合』だといっていた。

 クリアスコープにはマイクも付いているらしく、

音も休憩室まで届く。

 恐らくは副審との会話用をかねているのだろうが、

そんなことはどうでもいい。

 その戦いはまさに白熱の戦いだった。

 正直な話、ベスト8でやることじゃないと思った。

 勝ったほうが荒丘学園と戦うことになるのに、

それを一瞬忘れさせるほどの接戦。

 俺達の住む地方が全国レベルだけにベスト8でさえなければ、

魔道大会史に残るレベルの試合になること請け合いだった。

 気付けば、主将同士の戦いになる。

 一勝一敗二引き分け。

 この戦いで勝ったほうが準決勝進出だけに、

双方気合が入っている。

 そして、お互い牽制しあいながらも点を取り合う。

 すると、楓がこういう。

「爆砕波!」

 彼のその声で、爆発が起きる。

 それは相手に当たったが心配はいらない。

 爆発だろうと何だろうと、

物理的な物でなければ着ている制服で軽減されるからだ。

 しかし、いい戦いだった。

 これなら荒丘学園との戦いでも何とかなるだろう。

 そう思いつつ控え室に向かうと、明次道秀が現れた。

「八笠台学園の連中は噂ほどじゃないな」

 由莉が居るので、おそらく俺達への挑発だろう。

 しかし、彼は俺達が決勝に出ると思っているのだろうか?

「道秀といったな。何故俺達にちょっかいを出す?」

「楓の妹とやらが居るからさ。名前だけで強いってわけじゃねえが」

 すると由莉はこうさえぎる。

「それなりには強い、とでもいいたいのかしら」

「そうさ。だが、俺達には勝てない。全ては俺たちの力で制されるのだ」

「逆にいわせて貰うわ。確かに私たちは相性もあって不利だけど」

 すると、今度は意地返しとばかりに道秀がこういう。

「お前の兄貴達は俺達に負けない、とでもいうのか?」

「そうよ。あなた達のような野蛮な人たちに、お兄ちゃんは負けない!」

「面白い。だから兄貴がやられても絶望するんじゃねえぞ。潰しがいがなくなるからな」

 そういって道秀は去っていった。


続く

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