地方大会ベスト8・決着
俺は和久井真彦。至って普通の脇役だ。
先鋒であるゆめが相手に勝ち、とりあえず幸先はいいと感じた。
ベスト8もこの調子でいって欲しい物だが、
と思っているとゆめがこっちにやってくる。
「不安だったけど、割とどうにかなるものね」
「まあな。この調子なら心配なさそうだ」
「次は私の番だし、そろそろ行かないと」
そういって由莉はマットへと向かう。
相手も、向こう側で対峙していた。
「玉央学園の次鋒三枝由莉。南宿学園の次鋒、甲州佑一」
「玉央学園の生徒はまた見せてくれますね。しかし南宿学園は勢いづかせはしないでしょう」
それを聞いた由莉はこういう。
「あなたが南宿学園の次鋒なのね」
「あの楓の弟だけあった、いい試合をしていたな」
「褒めたからといって手は抜かないわよ」
「そのくらいは分かってるさ。俺だってかなりの相手と戦ってきたんだからな」
そして二人が構えるのを見計らうかのように、審判がこういう。
「それでは、試合開始です!」
「重裁波!」
佑一がそういうなり、重力波が巻き起こる。
相手に1.25倍の重力を与えるだけなので、
死には至らないが当たったら負けだ。
「ウインドストリーム!」
しかし、由莉は慌てず騒がず風の渦を右の掌から放射する。
風は重力の干渉を受けても、吹き荒れる方向が変わるだけだ。
また重力波は何かをぶつければそちらに重力がかかるため、
由莉には当たらない。
渦となった風であれば少々の重力には左右されないため、
相手にはそのまま当たる。
「ぐうっ!?」
風の渦の前には祐一もなすすべが無かったのか、
そのままふっとばされた。
「勝負ありです。勝者は由莉選手です」
審判の判定を聞いた由莉はこういう。
「重力波……面白い物を見せてもらったわね」
「風使いか……ちょっとちょうしに乗りすぎたな」
それを聞いて、由莉は俺達のところに向かってくる。
「何かあっさり勝ったような気がしないか?」
俺が正直な感想をいうと、由莉はこういう。
「慢心していたのよ。私たちは初参加だし……」
「それに、そういうのは相手に失礼よ」
そういったのはゆめだった。
そこに、穂花が割って入ってくる。
「まあこれで慢心できない相手だって知られちゃったし、こんなラッキーは続かないわ」
夏葵もこう同調する。
「そうね。油断してたら足元を掬われる物よ」
「とにかく、私達も戦わないと」
幸美はそういい、マットに上がる。
しかし相手もさる物であった。
幸美は接戦の末相手側の中堅に相打ちとなり引き分け、
夏葵もやはり接戦だったが相手側の副将に一手足りず判定負けとなった。
ということは俺が最低でも引き分けないと、
俺たちは準決勝に進めないということだ。
「この勝負で準決勝に進めるかどうかなんて、怖いな……」
「緊張してるの?」
そう聞いてくる穂花に対し、俺はこういう。
「よもや脇役の俺にそんな大役が回ってくるなんて思わなかっただけだ」
「脇役志願のあなたでも、今回ばかりは勝たなきゃいけない戦いよ」
夏葵にそういわれた俺はこういう。
「分かってるさ。脇役だからって、こういう時負けたら見てる奴に叩かれるからな」
「観客席に人が居るものね」
「さすがは部長だ。分かっているじゃないか」
「こういう時は部長って呼ぶのね」
そういう夏葵の茶化しは置いておき、
俺はマットへと向かう。
すると、俺の前に女性が相対する。
まあ今までも男女対決はあったので、
だからどうしたというほどでもない。
というか練習は女性相手だったので、むしろそれが自然にも思えた。
「玉央学園の主将和久井真彦。南宿学園の主将、橋浦未悠」
「いよいよこの戦いで運命が決まります」
「最悪引き分ければいい玉央学園に対し、勝つしかない南宿学園はどう戦うんでしょうか」
「それでは、試合開始です!」
そして俺たちは身構えた。
「サンドジャマー!」
未悠は砂で視界をさえぎろうとした。
「そうは行くか。バーニングスプリーム!」
俺は右手から炎を拡散して放った。
「なるほど、炎属性ね。相性が互角なら、後は!」
「実力で、決着が付く。とでもいうか!」
「サンドブラスト!」
土の塊が俺を襲ってくる。
「そんな物に当たるか!」
俺はかわしつつ、相手に踏み込む。
「かかったわね。サンドピラー!」
「読んでいたぞ!」
俺は土の柱に当たらないよう、右へ回り込む。
「なっ、闇雲に突っ込んだわけじゃないってわけ?」
「マネージャーが土属性だからな。そういう手があることは知っている!」
動揺する彼女にそう説明した上で、俺は右足を上げながらこういう。
「バーニングトルネード!」
左に居る相手に、炎を纏った右足の回し蹴りをかます。
読みあいに負け相手が動揺してなきゃ、上手く決まらないタイミングだ。
「うわあっ!」
「勝負あり。真彦選手の勝利です」
それを聞いた未悠はこういう。
「まんまと引っ掛けられたわね……」
「だが、最初に小技を使うのは中々やるなって思った」
そういってお互いの健闘を称えあった後で、
俺は仲間の元へとかけよった。
続く